この記事の目次(9項目)
出題範囲は4科目——割合と設問数の目安
中小M&A資格試験(仮称)の出題範囲は、M&A実務、倫理・行動規範、財務・税務、法務の4科目です。出題割合の現状案は、M&A実務35〜40%、倫理・行動規範25%、財務・税務20〜23%、法務17〜18%です。設問60問程度という現状案に当てはめると、M&A実務が21〜24問、倫理・行動規範が15問、財務・税務が12〜14問、法務が10〜11問という配分になります。中小企業庁は検討会の公表資料で科目ごとの小項目一覧を示し、そのうち特に重要度が高く優先的に出題する項目に●印を付けています。範囲は広く見えますが、優先度の重みづけまで公表されている点が、この試験の準備を組み立てやすくしています。
M&A実務(35〜40%)では何が問われるか
M&A実務は、事前相談からPMIまでの全工程が範囲です。小項目には、仲介契約・FA契約の締結、重要事項説明、スキームの選択(株式譲渡・事業譲渡・会社分割)、バリュエーション、マッチング、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージング、PMIが並びます。加えて、中小M&Aの市場動向と中小企業政策、すなわちM&A支援機関登録制度、事業承継・M&A補助金、各種ガイドラインの位置づけも範囲に含まれます。優先出題●の重心は、重要事項説明、最終契約ブロック、仲介とFAの違い、不適切な譲り受け側への対応、PMIに置かれています。工程を順に暗記するより、この5つのブロックを軸に周辺へ広げるほうが効率的です。
倫理・行動規範(25%)では何が問われるか
倫理・行動規範は、中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月30日公表)の行動指針が出題の母体です。具体的には、利益相反の管理、秘密保持、依頼者以外との直接交渉の制限、専任条項・テール条項の適正化、不適切な譲り受け側の排除、反社会的勢力との関係遮断が中心になります。この科目は単独で25%、60問想定なら15問前後を占め、M&A実務に次ぐ比重です。さらに禁忌肢を設定する方針が示されている科目でもあります。公表サンプル問題4問のうち2問がこの科目から出ていることも、比重の高さを裏づけています。知識量よりも、ガイドラインが「してはならない」と定める行為を例外なく判別できるかが問われる科目です。
財務・税務(20〜23%)では何が問われるか
財務・税務は、4科目のうち公表サンプルで計算問題が示された科目です。範囲は、簿記の基礎と財務3表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)の読み方、バリュエーションの3分類(コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチ)、財務デューデリジェンスと税務デューデリジェンスの調査事項、各種税金の基本、役員退職金、株式譲渡スキームの税務です。中小M&Aでは時価純資産法が用いられる場面が多い点、個人が株式を譲渡した場合は申告分離課税で税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)である点は、数値としてそのまま押さえる対象になります。公表サンプル問題ではFCF(フリーキャッシュフロー)の算定が出題されました。
法務(17〜18%)では何が問われるか
法務は、会社法・民法・労働法・弁護士法の4本柱です。会社法では株式譲渡の承認手続や事業譲渡に必要な株主総会決議、民法では契約の基礎、労働法では労働契約承継法が挙がります。特徴的なのは弁護士法で、独占業務の境界、すなわち支援機関がどこまで踏み込めるかの判定が優先出題に挙げられている点です。公表サンプル問題の法務1問も、独占業務の境界判定を問う形式でした。なお最終契約の表明保証、補償、解除、クロージングの前提条件は、法務とM&A実務の横断領域にあたります。配点は4科目で最も小さいものの、科目別の最低基準50%程度が想定されている以上、割合の小ささを理由に範囲から外すことはできません。
優先出題項目(●印)とは何か
優先出題項目(●印)は、中小企業庁が検討会の公表資料で「特に重要度が高く優先的に出題する項目(現状案)」として●印を付けた小項目です。全設問が●項目から出ると公表されているわけではありませんが、範囲全体を均等に潰すより、●項目を先に固めるほうが得点の期待は大きくなります。●の分布を見ると、M&A実務では重要事項説明と最終契約ブロックに集中し、倫理・行動規範ではガイドラインの禁止行為に、財務・税務では財務3表とバリュエーションに、法務では弁護士法に重心があります。範囲を絞る作業は、この試験では推測ではなく公表資料の読み取りで済みます。
出題割合から学習時間をどう配分するか
学習時間の配分は、出題割合をそのまま使うところから始めます。仮に総学習時間を100時間とすると、割合どおりならM&A実務に35〜40時間、倫理・行動規範に25時間、財務・税務に20〜23時間、法務に17〜18時間です。この配分は、総得点70〜80%程度という合格基準の第1層を満たすには合理的です。配点の大きい科目に時間を厚く置けば、総得点は最も効率よく積み上がります。ただしこの配分だけで組むと、科目別の合格最低基準50%程度という第2層で足をすくわれます。出題割合は「稼ぐための地図」であって、「落ちないための地図」ではないという点が、配分を決めるうえでの前提になります。
実際の配分は、出題割合に自分の現在地を掛け合わせて補正します。手順は3段階です。第1に、4科目それぞれの正答率を測り、50%に届いていない科目を特定します。第2に、その科目に対して割合が示す時間の1.5倍から2倍を先に割り当て、下限を確実に超える状態を作ります。第3に、残った時間を出題割合の順、すなわちM&A実務、倫理・行動規範、財務・税務、法務の順に配分して総得点を押し上げます。たとえば税理士が財務・税務ですでに高い正答率を持つなら、その20〜23時間分を削り、M&A実務と倫理・行動規範へ回すほうが、総得点と下限の両方に効きます。
範囲の中に、完全に捨ててよい部分はありません。科目別の合格最低基準50%程度という設計がある以上、配点17〜18%の法務であっても、その中で半分は取り切る必要があります。ただし優先順位はつけられます。●印のない小項目は、まず用語と位置づけを説明できる程度に留め、●印の項目は手続の順序、期限、例外まで踏み込む、という濃淡です。たとえば会社分割は、スキームの選択肢としての位置づけと使いどころを押さえれば足りますが、重要事項説明は、何をいつ誰に説明するかまで再現できる状態が求められます。範囲を狭めるのではなく、範囲内の解像度に差をつけるのが現実的な絞り方です。
過去問がない中で範囲をどう絞るか
過去問が存在しない中で範囲を絞る材料は3つです。1つ目は公表サンプル問題(正式4問・4科目各1問と、参考の禁忌肢問題1問)で、スキーム選択の比較判断、計算問題、契約条項の効力判断、独占業務の境界判定という4つの型と、参考問題の事例型の状況判断が読み取れます。2つ目は優先出題項目(●印)で、これは範囲の中の優先順位そのものです。3つ目は中小M&Aガイドライン第3版の本文で、倫理・行動規範の設問はここから作られます。逆に、出典の示されていない予想問題や、他資格のテキストの流用は、この試験の範囲を絞る材料にはなりません。範囲を絞る作業は、一次資料の読み込みにそのまま置き換えられます。
「現状案」であることをどう扱うか
ここまでの出題割合、設問数、優先出題項目は、いずれも中小企業庁の検討会資料に示された現状案です。資料には、試験案内等で公表する際に変更が生じうる旨の注記があります。したがって、割合を1%単位で最適化する作業に意味はなく、35〜40%と17〜18%の間にある「約2倍の差」という大きさを踏まえて配分すれば十分です。また出題範囲の小項目自体が追加・削除される可能性も残ります。公式テキストは2026年8月31日時点で公表されていません。当サイトは中小企業庁の公表を継続的に確認し、変更があれば本記事と関連ページを更新します。最終確認日は記事に記載しています。
出題範囲は今後変わりますか?
変更があり得ます。公表されている科目・出題割合・優先出題項目は検討会資料の現状案であり、試験案内等で公表する際に変更が生じうる旨が資料に明記されています。当サイトは公表を継続確認し、変更を反映します。
過去問はありますか?
新設試験のため過去問は存在しません。現時点の公式な手がかりは、公表サンプル問題(正式4問・4科目各1問+参考の禁忌肢問題1問)と、科目ごとの小項目一覧、優先出題項目(●印)、出題割合の4点です。
4科目のうちどれから勉強すべきですか?
正答率が50%に届いていない科目からです。科目別の合格最低基準50%程度が想定されているため、配点の大きいM&A実務から始めるより、下限を割りそうな科目を先に埋めるほうが合格に近づきます。
優先出題項目(●印)だけを勉強すれば足りますか?
足りません。全設問が●印の項目から出ると公表されているわけではなく、科目別の最低基準もあるためです。●項目は手続の順序や例外まで踏み込み、それ以外は用語と位置づけを説明できる程度に留める、という濃淡のつけ方が現実的です。
計算問題はどの科目で出ますか?
財務・税務です。公表サンプル問題で計算問題が示された科目で、FCF(フリーキャッシュフロー)の算定が問われました。株式譲渡の税率20.315%のような数値も、そのまま押さえる対象になります。