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模試で総得点を見ても、判断材料にならないのはなぜか
模試の総得点は、それ単独では合否の判断材料になりません。合格基準の現状案が3層構造だからです。検討会資料が示しているのは、総得点70〜80%程度に加えて、科目別最低基準50%程度、さらに倫理・行動規範に設定する禁忌肢という3つの条件です。総得点72%の答案が2通りあったとして、4科目とも60%台で揃っている答案と、M&A実務が85%で法務が40%の答案では、次にやるべきことがまったく違います。前者は全体の底上げ、後者は法務だけの立て直しです。総得点はこの違いを消してしまう指標なので、模試の結果画面で最初に開くべきは総得点ではなく科目別の内訳になります。
もうひとつ、模試の点数を絶対値として受け取れない理由があります。中小M&A資格試験は2026年8月31日時点で実施されておらず、過去問は存在せず、公表されている問題例は検討会資料のサンプル問題4問だけです。当サイトの模試を含め、現在存在するあらゆる模試は公表資料を根拠に独自作成された問題であり、本試験の難度や配点そのものを再現しているという保証はありません。したがって模試から取り出せる情報は「何点だったか」ではなく「どこで、なぜ、どういう形で落としたか」という構造の側にあります。以下の5つの視点は、すべてこの構造を読むためのものです。
受験前の準備——模試を予行演習にする環境の作り方
模試から構造を読み取るには、受ける前に環境を本番の想定に寄せておく必要があります。試験形式の現状案は設問60問程度・試験時間120分・CBT方式なので、揃えるべき条件は4つです。第一に、120分を分割せず連続して確保すること。途中で中断すると、視点4の終盤の集中力がまったく測れません。第二に、紙ではなく画面で問題文を読むこと。CBT方式では長い事例文も画面上で読むことになり、紙で解いたときより読み返しに時間がかかります。第三に、手元に計算用の紙とペンを1組だけ置くこと。財務・税務は4科目のうち公表サンプルで計算問題が示された科目で、公表サンプル問題にもFCF(フリーキャッシュフロー)の算定が含まれています。第四に、開始時刻を実際に受けそうな時間帯に合わせることです。
環境と同時に、記録の準備もしておきます。模試中に記録するのは2種類だけです。1つは、30分・60分・90分の3時点で、そのとき何問目を解いていたかというメモ。もう1つは、迷ったまま次に進んだ問題の番号です。この2つを解答中に手元の紙へ書くだけで、終了後に視点2と視点3が数字で読めるようになります。逆に、解いている最中に自信度を細かく記録しようとすると、それ自体が時間を食って本番の再現性が落ちます。記録は最小限にとどめ、詳細な分析は終了後に回してください。なお、本試験のCBT画面にどのような操作機能が用意されるかは、2026年8月31日時点で公表されていません。特定の画面機能を前提にした練習ではなく、「保留して後で戻る」という行動そのものを練習すると考えてください。
視点1:科目別に50%を超えているか
視点1は、M&A実務・倫理・行動規範・財務・税務・法務の4科目それぞれで、正答率が50%を超えているかどうかです。合格基準の現状案には科目別最低基準50%程度が置かれており、1科目でも基準を割れば、他科目でどれだけ得点しても結果は変わらない設計になります。したがって模試の結果は、まず「50%を割った科目が何科目あるか」という1つの数字に要約します。0科目なら総得点の底上げの段階、1科目ならその科目の集中対策、2科目以上なら学習計画そのものの割り付け直しが必要、という読み分けになります。
科目別正答率を読むときに気をつけたいのは、設問数の少ない科目ほど数字が振れることです。出題割合の現状案は、M&A実務35〜40%、倫理・行動規範25%、財務・税務20〜23%、法務17〜18%です。設問60問なら法務はおよそ10問前後にとどまるため、1問の増減が10ポイント動きます。法務が45%だったとき、それが実力なのか揺らぎなのかは1回の模試では判断できません。判断を確定させたい場合は、その科目だけを追加で20問程度解いて、正答率が同じ水準に落ち着くかを確認します。逆に、設問数が多いM&A実務の正答率は1回でもある程度信用できます。
視点2:120分の時間配分の癖——前半に使いすぎていないか
視点2は、120分をどう使ったかという配分の癖です。設問60問程度・試験時間120分という現状案では、単純平均で1問2分になります。ただし実際には、知識を問う設問は30秒から1分で終わり、事例型の状況判断や計算問題は3分から5分かかります。公表サンプル問題から読み取れる出題の型は、スキーム選択の比較判断、計算問題(FCF算定)、契約条項の効力判断、独占業務の境界判定(参考として禁忌肢の事例問題)で、計算と事例型は読むだけでも時間を要します。つまり60問を均等に2分ずつ使う配分は最初から成立せず、短く済む設問で時間を作り、重い設問に回すという運用が前提になります。
配分の癖は、受験前に記録した3時点のメモで読みます。均等ペースなら30分で15問、60分で30問、90分で45問です。前半に時間を使いすぎる人は、30分の時点で10問前後、60分の時点で25問前後という数字が出ます。この形になっていた場合、原因はほぼ2つに絞られます。1つは、事例型の長文を最初から最後まで丁寧に読み、選択肢を見てからもう一度読み返していること。もう1つは、迷った設問をその場で決着させようとして、次に進めていないことです。前者は設問文の末尾(何を問われているか)を先に読む順序に変えると短縮され、後者は視点3のフラグ運用の問題になります。逆に、90分で55問を超えているのに正答率が伸びない場合は、速さではなく読み落としの側を疑います。
視点3:見直しフラグの運用——付けた数と戻れた数を数える
視点3は、迷った設問を保留して後で戻るという運用が機能したかどうかです。評価する数字は3つあります。第一に、保留した設問の数。第二に、そのうち実際に戻って検討し直せた数。第三に、戻って解答を変更した設問のうち、誤答から正答に変わった数と、正答から誤答に変わった数です。1つ目の数が多すぎると2つ目が追いつかず、保留の意味がなくなります。60問の試験なら保留は8問前後が上限の目安で、これを超えたら「迷ったら保留」ではなく「迷ったら現時点の最有力を選んでから保留する」という運用に切り替えます。仮の解答を先に入れておけば、戻れなかった場合でも空欄にはなりません。
3つ目の数字は、見直しそのものの是非を判断する材料になります。戻って変更した結果、誤答から正答への変更が正答から誤答への変更を上回っていれば、見直しは機能しています。逆に、正答から誤答に変えた数のほうが多い場合は、見直しの基準が「なんとなく不安だから」に寄っています。この場合は、変更してよい条件をあらかじめ決めておきます。たとえば、読み違えていた条件を発見したときと、規範の文言を確認して判断が変わったときの2つに限り、それ以外は最初の解答を残す、という決め方です。倫理・行動規範の設問については、禁忌肢が想定されている以上、迷った時点で「依頼者の利益を後回しにする側の肢を選んでいないか」を確認する手順を固定しておくと、変更の質が安定します。
視点4:終盤の集中力——前半30問と後半30問の差を見る
視点4は、終盤に正答率が落ちていないかです。測り方は単純で、前半30問の正答率と後半30問の正答率を別々に出し、その差を見ます。差が5ポイント以内なら120分を通して同じ精度で解けており、10ポイント以上開いていれば、後半の失点は知識の問題ではなく持久力の問題です。この区別が重要なのは、対策がまったく違うからです。知識不足なら該当科目の原文に戻る必要がありますが、持久力の問題であれば、原文を読み込んでも後半の正答率は上がりません。必要なのは120分を分割せずに通す経験を重ねることと、配分を前倒しして終盤に時間の余裕を残すことです。なお、CBT方式では設問の並び順が受験者ごとに異なる可能性があり、前半・後半という区切りは科目単位ではなく解答順で見ます。
視点5:誤答の理由分類——4つに分けると対策が変わる
視点5は、間違えた設問を4つの理由に分類することです。①知識がなかった、②読み違えた、③計算を誤った、④規範を取り違えた、の4つに分けます。①は、その論点を学習していないか、学習したが思い出せない状態です。対策は出題範囲の該当項目に戻ることで、優先出題項目(●印)に含まれる項目であれば最優先で埋めます。②は、条件の見落としや主語の取り違えで、知識はあるのに落とす型です。対策は学習ではなく読み方の手順で、設問文のうち当事者・時点・何を問われているかの3点に印をつけてから選択肢に入る、といった固定手順で減らせます。
③の計算を誤ったは、財務・税務に集中して現れます。この科目は4科目のうち公表サンプルで計算問題が示された科目で、間違いの中身は「手順を知らなかった」ではなく「符号や税率の内訳を取り違えた」であることが多くなります。運転資本の増減をFCFに反映するときの向きや、個人の株式譲渡にかかる申告分離課税の税率20.315%が所得税15.315%と住民税5%の合計であることは、途中式を書き出して初めて取り違えに気づけます。④の規範を取り違えたは、4分類のうち最も重く扱う型です。倫理・行動規範には禁忌肢が設定される方針で、複数の設問に配置し一定数を選ぶと不合格とする設計が想定されています。④に分類された誤答は、中小M&Aガイドライン第3版の該当箇所に戻り、自分がなぜその肢を許容できると判断したのかまで書き出してください。実務の慣行を基準に判断していた場合、同じずれは次も再現します。
4分類は構成比で読みます。①が大半を占めるなら、まだ範囲の学習が終わっていない段階であり、模試を繰り返すより原文に戻るほうが効率的です。②と③が多いなら、知識は足りていて失点の原因は手順にあるため、解き方の固定と計算の反復で短期間に改善します。④が1問でもあれば、他の分類より先に処理します。数のうえでは少なくても、禁忌肢に相当する判断のずれは総得点と切り離された条件に触れるためです。
模試の後、どの順番で振り返るか
振り返りは当日と翌日以降に分けます。当日、模試の終了から時間を空けずに30分だけ確保し、次の順で処理します。第一に科目別正答率を出して50%を割った科目を数える。第二に30分・60分・90分の通過問題数を書き写して均等ペースとの差を出す。第三に保留した設問の数と戻れた数、変更の内訳を数える。第四に前半30問と後半30問の正答率差を出す。第五に誤答を4分類に振り分ける。ここまでが当日の作業で、解説を読み込むのは翌日以降です。当日に解説へ入ると、記憶が新しいうちに取るべき時間配分と保留の記録が後回しになり、視点2から視点4が測れなくなります。
翌日以降は、4分類ごとに処理の仕方を変えます。①知識がなかった設問は該当項目の原文に戻り、読んだ直後に同じ論点の演習を数問解いて確認します。②読み違えた設問は、なぜ読み違えたのかを1行で書き、同じ型の設問を続けて解いて手順を固定します。③計算を誤った設問は、答えを見ずに途中式を最初から書き直し、どの段階で数値が分岐したかを特定します。④規範を取り違えた設問は、ガイドライン第3版の該当箇所を読み、選ばなかった肢も含めて各選択肢がどの規範に照らして適切か不適切かを言語化します。そのうえで、間違えた設問は翌日・3日後・1週間後の3回、間隔を空けて解き直します。1回目で正答できても、3回目まで残すのは、正答が理解ではなく記憶による場合を見分けるためです。
模試は何回、いつ受けるか
本番形式の模試は最低2回、範囲の学習が一巡したあとに置きます。1回目の目的は視点2から視点4の測定、2回目の目的は1回目で見つかった癖が直ったかの確認です。この2回の間隔は、修正した配分や保留の運用を演習で試す時間として、1週間から10日程度を取ります。範囲が一巡する前に模試を入れると、失点の大半が①知識がなかったで埋まり、時間配分や集中力の測定になりません。学習の初期に現在地を測りたい場合は、120分の模試ではなく20問程度の科目横断の診断を使い分けてください。3回目以降を受けるかどうかは、2回目で科目別50%を割った科目が残っているかで決めます。残っていなければ、模試を重ねるより誤答の解き直しに時間を回すほうが効果的です。
模試は本試験と同じ問題ですか?
違います。中小M&A資格試験は2026年8月31日時点で実施されておらず、過去問は存在しません。当サイトの模試は中小企業庁の公表資料を根拠に独自作成した問題で、本試験問題の再現や転載は行っていません。
模試で何点取れれば合格圏ですか?
模試の点数から合否を判断することはできません。合格基準は総得点70〜80%程度・科目別最低基準50%程度・禁忌肢という現状案が示されている段階で、確定した基準も本試験の実績も2026年8月31日時点で公表されていないためです。模試は点数ではなく、科目別50%の到達と失点の型を見るために使ってください。
総得点は高いのに1科目だけ50%未満でした。どうすればよいですか?
その1科目に学習時間を集中させてください。合格基準の現状案には科目別最低基準50%程度が含まれており、1科目でも基準を割ると他科目の得点が結果を変えられない設計になります。得意科目の上積みより優先度が高い作業です。
時間が足りずに最後まで解けませんでした。何を直せばよいですか?
30分・60分・90分の通過問題数を確認し、どこで遅れたかを特定してください。前半で遅れているなら事例型の設問の読み方と保留の運用、終盤で失速しているなら120分を通す経験の不足が原因です。原因によって直す対象が変わります。
模試は何回受ければよいですか?
最低2回です。1回目で時間配分と集中力の癖を測り、2回目で修正できたかを確認します。範囲の学習が一巡する前に受けると知識不足の失点に埋もれて配分が測れないため、置く時期のほうが回数より重要です。
本試験のCBT画面ではどんな操作ができますか?
2026年8月31日時点で公表されていません。試験形式の現状案として設問60問程度・試験時間120分・CBT方式が示されているのみです。特定の画面機能を前提にせず、迷った設問に仮の解答を入れてから先に進むという運用を練習してください。