この記事の目次(7項目)
出題範囲一覧で手数料に触れているのは倫理・行動規範の項目だけ
中小企業庁が検討会第4回で公表した出題範囲一覧(資料3)には、手数料という語を含む項目が1か所あります。その項目は倫理・行動規範の科目に置かれ、中項目「各工程の具体的な行動指針」の下で「仲介契約・FA契約の締結(手数料・提供する業務内容の説明、相手方の手数料の開示)」と書かれています(2026年10月20日確認)。
この項目に優先出題項目を示す●は付いていません。M&A実務・財務・税務・法務の各科目には、手数料という語を含む項目はありません。つまり手数料は、工程の知識としてではなく、支援者の行動規範として出題範囲に入っています。
出題範囲一覧は検討会に提出された資料であり、記載内容は現状案です。個別項目が何問出題されるか、配点がどうなるかは、2026年10月20日時点で公表されていません。項目の書き方から読めるのは、問われる軸が金額の水準ではなく「説明したか」「開示したか」であることです。
この項目は3つの行為を1行に並べています。手数料の説明、提供する業務内容の説明、そして相手方の手数料の開示です。仲介者は譲渡側と譲受側の双方と契約するため、相手方がいくら払うのかを開示する行為が、仲介特有の論点として独立して書かれています。
「基準となる価額」は3種類あり、同じ料率でも報酬額が変わる
中小企業庁は中小M&Aガイドラインの関連資料「仲介者・FA金融機関の手数料について」で、成功報酬の基準となる価額を3種類に整理しています。譲渡額は株式価額等の譲渡額、移動総資産額は譲渡額に負債を加えた額、純資産額は資産から負債を引いた額です(2026年10月20日確認)。
3種類のうちどれを基準に置くかで、同じ料率でも報酬額は変わります。負債を抱えた会社では、移動総資産額は譲渡額より大きくなります。したがって契約書に書かれた料率が同じでも、基準の定義が違えば譲渡側の手取りは変わります。
この構造が、出題範囲の「手数料の説明」という行為と結び付きます。料率だけを伝えて基準の定義を伝えなければ、譲渡側は最終的に支払う額を見積もれません。選択肢の適否を判断するときは、金額の高低ではなく、基準の定義まで説明されたかどうかを見てください。
レーマン方式は階層ごとの料率を合算する手法として説明されている
同じ資料は、レーマン方式を「基準となる価額に応じて変動する各階層の乗じる割合を合算して報酬を算定する手法」として説明しています。基準となる価額の全額に単一の料率を掛ける方式ではなく、階層に区切ってそれぞれの料率を掛け、結果を足し上げる方式です(2026年10月20日確認)。
資料が示した階層の例では、5億円以下の部分に5%、5億円超10億円以下に4%、10億円超50億円以下に3%、50億円超100億円以下に2%、100億円超に1%が対応しています。これは中小企業庁が手数料の仕組みを説明するために示した例であり、試験の正解として公表された数値ではありません。
試験対策として階層の料率を暗記する根拠は、2026年10月20日時点の公表資料にはありません。覚える価値があるのは、料率が階層ごとに下がるという構造と、その料率を掛ける相手が3種類の基準のどれかであるという点です。
最低手数料が成功報酬を上回る計算例が公表されている
同じ資料には、小規模な案件で最低手数料が成功報酬を上回る計算例が載っています。譲渡額5,000万円の株式譲渡で、着手金・月額報酬・中間金をいずれもなしとした場合、成功報酬は5,000万円に5%と消費税相当の110%を掛けた275万円です(2026年10月20日確認)。
この例では最低手数料が1,000万円(税抜)に設定されており、税込で1,100万円になります。最低手数料が成功報酬を上回るため、実際に請求されるのは1,100万円です。譲渡額5,000万円に対して手数料が1,100万円を占める計算になります。
同じ資料は、登録M&A支援機関における最低手数料の分布も示しています。分布の区分は100万円未満から3,000万円までの範囲に置かれています。この分布があるという事実は、最低手数料の水準が機関によって異なり、契約前に確認すべき項目であることを示しています。
検討会第4回の資料2は、手数料に関する初期的分析として、小規模な案件で料率が高くなる傾向を示しています。その原因として最低手数料の存在が挙げられています。計算例と分析は、同じ構造を別の角度から示したものです。
登録制度では登録M&A支援機関の手数料体系が公表されている
中小企業庁は2026年3月9日の登録FA及び仲介業者の公表のページで、登録M&A支援機関の手数料体系も併せて公表していると明記しています。登録機関を検索できるデータベースが用意され、中小企業が支援機関を探す際に参照できる仕組みになっています(2026年10月20日確認)。
M&A支援機関登録制度は2021年8月に創設され、登録には中小M&Aガイドラインの遵守を宣言することが要件とされています。手数料体系の公表は、ガイドラインが求める説明義務を制度側から支える仕組みです。
試験との関係で押さえるべき点は、手数料の開示が個々の支援者の判断に委ねられた努力目標ではなく、登録制度を通じて外から確認できる状態に置かれていることです。倫理・行動規範の選択肢で開示を怠る行為が示されたとき、それは制度の前提に反する行為として評価されます。
2026年10月20日時点で公表されていないこと
中小M&A資格試験(仮称)の試験日、受験申込方法、受験料、受験資格、試験の正式名称、公式テキストは、2026年10月20日時点でいずれも公表されていません。手数料に関する項目が何問出題されるか、配点が何点かも公表されていません。
公表されているのは、出題範囲一覧に手数料の項目が倫理・行動規範の1か所だけ置かれていること、その項目に●が付いていないこと、そして手数料の仕組みを説明する一次資料が無料で読めることです。この3点の範囲で準備を組んでください。
次の一歩:倫理・行動規範の選択肢を「開示」まで見て切る
今日できる行動は1つです。無料模試の倫理・行動規範の問題を解き、手数料が登場する選択肢を「金額が高いか安いか」ではなく「手数料の説明・業務内容の説明・相手方の手数料の開示という3つの行為のどれが欠けているか」で切れるかを確かめてください。
この確認を先にやる価値は、出題範囲の項目が金額ではなく行為を並べて書かれている点にあります。金額の相場を覚える方向に時間を使っても、この項目の判断軸はつかめません。無料登録をすると診断・模試の結果が保存され、次回以降の学習に使えます。
中小M&A資格試験で手数料の計算問題は出ますか。
2026年10月20日時点で公表されている出題範囲一覧には、手数料の計算を求める項目はありません。手数料に触れている項目は倫理・行動規範の「仲介契約・FA契約の締結(手数料・提供する業務内容の説明、相手方の手数料の開示)」の1か所で、記載は説明と開示という行為に向いています。公表サンプル問題で計算が示されたのは財務・税務の科目です。
レーマン方式の料率は暗記すべきですか。
暗記を求める根拠は、2026年10月20日時点の公表資料にはありません。中小企業庁の手数料説明資料が示した階層の料率は、仕組みを説明するための例として掲載されたものです。押さえるべきは、階層ごとに料率を掛けて合算する構造と、料率を掛ける基準が譲渡額・移動総資産額・純資産額の3種類に分かれる点です。
相手方の手数料の開示とは何を指しますか。
仲介者が譲渡側と譲受側の双方から手数料を受け取る場合に、一方の当事者に対して他方が支払う手数料を伝える行為を指します。出題範囲一覧では、手数料の説明と提供する業務内容の説明と並べて、倫理・行動規範の項目に書かれています。仲介とFAで立場が異なるため、双方から受け取る構造を持つ仲介で固有の論点になります。
手数料の論点を今から準備するには何をすればいいですか。
無料模試の倫理・行動規範のパートを解き、手数料が出てくる選択肢を3つの行為の欠落で判定する練習から始めてください。そのうえで中小M&Aガイドラインの手数料関連資料を読み、基準となる価額の3種類と最低手数料の位置づけを確認します。どちらも費用はかからず、2026年10月20日時点で公表されている範囲で完結します。