この記事の目次(12項目)
  1. 公表されているのは倫理・行動規範のサンプル1問——正答は4肢すべてを選ぶ④
  2. 設問の前提——「資格を保有しない」支援者が、報酬を得て行う行為
  3. (ア)無効な譲渡について、本人の代わりに第三者と交渉する
  4. (イ)契約外・無償で、株主が負担する税額を試算する
  5. (ウ)報酬を受け取り、その一部で弁理士に商標申請を行わせる
  6. (エ)懲戒処分が可能という見解を、代表者に伝える
  7. 正答が④で揃う設計——4肢に共通して問われている1つの基準
  8. この項目に●は付いていない——優先出題項目の有無では捨てられない
  9. 倫理・行動規範には禁忌肢がある——配点だけでは測れない重さ
  10. 合格後の登録にも接続する——誓約書の想定内容は倫理・行動規範の遵守
  11. 独占業務の境界を自分で判定する3つの問い
  12. 次の一歩:公表サンプル1問の4肢を、理由まで言えるか確かめる

公表されているのは倫理・行動規範のサンプル1問——正答は4肢すべてを選ぶ④

中小企業庁は、中小M&A資格試験(仮称)の科目「倫理・行動規範」のサンプル問題を1問公表している(検討会第4回資料2・2026年3月17日)。形式は四肢択一で、正答は④である。④の選択肢は「ア、イ、ウ、エ」で、設問に並ぶ4つの行為のすべてを選ぶ内容になっている。正式なサンプル問題は4科目各1問の計4問で、倫理・行動規範の1問がこの独占業務を扱う問題にあたる。4科目のうち倫理・行動規範については、これとは別に禁忌肢の仕組みを示す参考問題1問も同じ資料に示されている。

設問の前提——「資格を保有しない」支援者が、報酬を得て行う行為

設問は解答者の立場を前提として明示している。問題文は「A社とアドバイザリー契約を締結して報酬を得ているM&A支援機関に所属する私」と書き、そのうえで「ただし、私は弁護士、税理士、弁理士等の資格保有者ではないものとする」という条件を置いている。問われているのは、この立場の支援者が「適法に行えないもの」をすべて選ぶことである。前提文が弁護士・税理士・弁理士の3つを名指ししている点が、この設問の読み方を決める。4つの肢は、法律事務(ア・エ)、税務(イ)、商標(ウ)という3つの領域に振り分けられており、前提で挙げられた3資格と対応している。

(ア)無効な譲渡について、本人の代わりに第三者と交渉する

肢(ア)は、A社の代表者が過去に株主総会決議を経ずに会社の不動産を第三者Xへ譲渡していた事例である。設問の「私」は、その譲渡が会社法に照らして無効であると判断し、A社に代わってXと交渉している。この肢で起きているのは、法令にあてはめた判断と、その判断に基づく相手方との交渉という2つの行為である。報酬を得ているという前提は設問の冒頭に置かれており、肢(ア)はその報酬の範囲内の行為として書かれている。中小企業庁が示した正答は④であり、この肢は適法に行えない側に含まれている。

(イ)契約外・無償で、株主が負担する税額を試算する

肢(イ)は、株式譲渡で株主が支払うことになる税金の金額を、アドバイザリー契約の外側で、無償で試算した行為である。設問はこの肢にだけ「アドバイザリー契約外」と「無償」という2つの条件を付けている。それでも中小企業庁が示した正答④は、この肢を適法に行えない側に含めている。この設問が置いている基準は、報酬を受け取ったかどうかではない。支援者が好意で引き受けた無償の作業であっても、その作業が資格者の業務とされている領域に入れば判定は変わらない、という構造が肢(イ)で確認できる。

(ウ)報酬を受け取り、その一部で弁理士に商標申請を行わせる

肢(ウ)は、A社のマスコットキャラクターの商標登録が未了だったため、設問の「私」がA社と契約して報酬を受領し、その一部を弁理士に支払って、自分に代わって商標申請を行わせた行為である。実際の申請手続を資格者である弁理士が行っている点が、この肢の特徴である。それでも中小企業庁が示した正答④は、この肢を適法に行えない側に含めている。問われているのは誰が手続を行ったかではなく、誰が業務を受任して報酬を受けたかである。専門家へ実務を回す形をとっても、受任して報酬を受ける主体が資格を持たない支援者であれば判定は変わらない、という設計になっている。

(エ)懲戒処分が可能という見解を、代表者に伝える

肢(エ)は、問題のある従業員を退職させたいという相談を代表者から受け、設問の「私」が、その従業員の行為は懲戒事由に該当するため本件では懲戒処分が可能である、という見解を伝えた行為である。相手は依頼者であるA社の代表者だけで、第三者との交渉も書面の作成も設問には書かれていない。それでも中小企業庁が示した正答④は、この肢を適法に行えない側に含めている。肢(エ)が示しているのは、具体的な事実に法令をあてはめて結論を伝える行為そのものが判定の対象になるということである。

正答が④で揃う設計——4肢に共通して問われている1つの基準

4つの肢は、報酬の有無、手続を行った主体、相手方、作成した書面の有無のいずれもばらばらに設定されている。それでも中小企業庁が示した正答は④の1つで、4肢のすべてが適法に行えない側に揃う。この設問は、肢ごとの条件の違いを手がかりに正解を絞らせる作りになっていない。4肢に残る共通点は、いずれの行為も弁護士・税理士・弁理士のいずれかの業務とされている領域に入っていることである。支援者が自分で線を引くときの基準は、行為の軽重でも有償か無償かでもなく、その行為が資格者の業務として定められているかどうかの1点になる。

この項目に●は付いていない——優先出題項目の有無では捨てられない

出題範囲一覧(検討会第4回資料3)では、「独占業務違反」は科目「倫理・行動規範」の項目として置かれている。この項目には優先出題項目を示す●印が付いていない(2026年10月2日時点で確認)。一方で、中小企業庁が倫理・行動規範のサンプル問題として公表した1問は、この項目から作られている。●が付いていない項目からサンプル問題が公表されているため、●の有無を学習範囲の取捨選択の基準にすると、公表済みの出題の型を落とすことになる。●は学習の順番を決める情報として使い、出題されるかどうかの判定には使わないのが安全である。

倫理・行動規範には禁忌肢がある——配点だけでは測れない重さ

倫理・行動規範の出題割合は25%程度で、設問数60問程度という現状案から算術で求めると15問前後に相当する(いずれも中小企業庁 検討会第4回資料2の現状案)。合格基準の現状案は、総得点の70〜80%程度、科目別合格最低基準50%程度、そして倫理・行動規範に設定される禁忌肢の3層である。資料2は禁忌肢について、倫理・行動規範に著しく反するような支援者を排除する目的で、それを正しいと理解することに大いに問題がある誤答肢に設定すると書いている。どの誤答肢が禁忌肢になるかは、2026年10月2日時点で公表されていない。公表されているのは、禁忌肢が置かれる科目が倫理・行動規範であることと、この設定目的だけである。

合格後の登録にも接続する——誓約書の想定内容は倫理・行動規範の遵守

中小企業庁は2026年7月21日の検討会第5回資料2で、試験合格後の登録制度の案を示している。登録時の要件は、試験合格、誓約書の提出、登録講習の修了、欠格事由に該当しないことの確認を組み合わせる想定である。このうち誓約書の想定内容として、同資料は倫理・行動規範の遵守と、取消事由に該当した場合の登録取消措置への同意を挙げている。登録の取消要件としては、資格者として信頼を失墜させる行為や、不正・著しく不当な行為が想定として挙げられている。独占業務の境界は、試験の1問として問われるだけでなく、合格後に登録を続ける条件の側にも置かれている。

独占業務の境界を自分で判定する3つの問い

公表サンプル1問の4肢は、次の3つの問いで同じ向きに並べ替えられる。第1に、その行為は具体的な事実に法令をあてはめて結論を出す作業か。第2に、その作業は弁護士・税理士・弁理士のいずれかの業務とされている領域に入るか。第3に、自分が受任して報酬を受ける形になっていないか。肢(イ)は無償であっても第2の問いで止まり、肢(ウ)は手続を弁理士が行っていても第3の問いで止まる。4肢のうちどれがどの問いで止まるのかを言えるようになっていれば、事例が入れ替わってもこの型の設問は再現できる。

次の一歩:公表サンプル1問の4肢を、理由まで言えるか確かめる

今日やることは1つです。この記事に並べた4つの肢(ア)(イ)(ウ)(エ)を見ないで書き出し、それぞれが上の3つの問いのどこで止まるのかを1行で言えるかを試してください。正答が④であることは覚えれば済みますが、この設問が問うのは4肢の判定理由であり、覚えた正答は事例が置き換えられた瞬間に使えなくなります。

4肢のうち1つでも理由を書けなかった場合は、倫理・行動規範の判定がどこで止まっているかを、当サイトの無料の実力診断または無料模試で科目別に確かめるのが近道です。無料登録をすると診断・模試の結果が保存され、次に同じ型の設問を解いたときに、どの肢の判定が変わったかを比べられます。

中小M&A資格試験の倫理・行動規範のサンプル問題は何問公表されていますか

正式なサンプル問題は1問です。中小企業庁は検討会第4回資料2で4科目各1問の計4問を公表しており、そのうち倫理・行動規範の1問が独占業務を扱う問題です。これとは別に、禁忌肢の仕組みを示す参考問題が1問示されています。

独占業務のサンプル問題の正答はどれですか

正答は④です。④は「ア、イ、ウ、エ」で、設問に並ぶ4つの行為のすべてを適法に行えないものとして選ぶ内容です。正答は中小企業庁の検討会第4回資料2に明示されています。

無償であれば支援者が税務の試算をしてもよいのですか

公表サンプル問題では、無償の税務試算も適法に行えない側に含まれています。設問は肢(イ)に「アドバイザリー契約外」と「無償」という2つの条件を付けたうえで、正答④にこの肢を含めています。試験対策としては、報酬の有無を基準にしない判定を身につけることになります。

独占業務の項目は、いまから何を準備すればいいですか

公表サンプル1問の4肢を、正答ではなく判定理由の側から再現できるようにするのが最初の準備です。中小M&A資格試験(仮称)の試験日・受験申込方法・受験料は2026年10月2日時点で公表されていないため、期限から逆算した準備はまだ組めません。先に倫理・行動規範の判定が科目別合格最低基準50%程度(現状案)に届いているかを無料の実力診断または無料模試で確かめておくと、公表された日に学習計画へ切り替えられます。