この記事の目次(7項目)
  1. 「仲介」と「FA」は、中小M&A資格試験の入口では分けられていない
  2. 合格者像も「仲介者・FA」を並記している
  3. 区別が現れるのは、出題される規範の側
  4. この書き分けが四肢択一でどう効くか
  5. 登録制度の側では、FA業務と仲介業務は「又は」で束ねられる
  6. 受験準備での扱い方——立場を固定してから規範を読む
  7. 次の一歩:自分の立場をひとつ決めて、その立場で診断を解く

「仲介」と「FA」は、中小M&A資格試験の入口では分けられていない

中小企業庁の検討会第4回資料2は、中小M&A資格試験(仮称)の主な受験対象を「仲介者・FA等のM&A専門業者又はその他の支援機関(金融機関、士業等専門家、M&Aプラットフォーム等)に所属する仲介・FA業務に関わる者及び今後中小M&Aの仲介・FA業務を行おうとする者」と記載している(現状案)。この一文は、所属する会社の業態でも保有資格でもなく、担当している業務で受験対象を区切っている。仲介業務とFA業務は「仲介・FA業務」という一語にまとめられ、どちらか一方だけを対象にするという書き方はされていない。

同じ資料は「また、商工団体や事業会社において中小M&Aに携わる者等についても、受験を広く推奨する」と続け、主な受験対象と推奨対象を2文に書き分けている。書き分けの基準は所属先であって、仲介かFAかではない。受験の入口で仲介とFAが区別されていないことは、この2文のどちらにも両者を分ける記述が置かれていないことから確認できる。

受験資格そのものは2026年9月18日時点で公表されていない。仲介業務の担当者とFA業務の担当者で受験区分が分かれるかどうかも、同時点で公表されていない。試験日・受験料・受験申込方法も同様に公表されていない。

合格者像も「仲介者・FA」を並記している

検討会第4回資料2は合格者像を「中小M&Aにおける一連のプロセスの着実かつ円滑な実行に必要な知識(仲介者・FAにおける案件担当者として、依頼者の意向を把握し、財務・税務、法務の基礎的な知識をもって、M&Aプロセスを進める際に検討が必要な論点を見極め、士業専門家と連携できる水準を想定)を有し、ガイドラインおよびスキルマップに規定されている倫理・行動規範の内容を理解した上で、仲介・FA業務における論点・課題について正しく判断し、対応できる者」と記載している(現状案)。

この合格者像は、依頼者の意向を把握することと、士業専門家と連携できることの2つを水準として挙げている。いずれも仲介者とFAに共通の要求として書かれており、立場ごとに別の水準を設ける記述は置かれていない。受験対象と合格者像という制度の入口と出口の両方で、2つの業務は1つの束として扱われている。

区別が現れるのは、出題される規範の側

中小企業庁の中小M&Aガイドラインのページは、第3版の改訂内容として「仲介者において禁止される利益相反事項の具体化を図っている」と記載している。同じページは営業・広告について「仲介者・FAが実施する営業・広告に係る規律の明記」と記載している。利益相反の主語は仲介者であり、営業・広告の主語は仲介者・FAである。主語が節ごとに変わることが、公表資料の上で仲介とFAの違いを確認できる箇所である。

中小企業庁の中小M&Aガイドラインのページには、仲介者とFAの違いを定義として説明する記述はない。定義が示されないまま、規律の適用範囲だけが書き分けられている。受験者にとって意味を持つのは定義の暗記ではなく、どの規律がどちらの主語で書かれているかを区別できることである。

倫理・行動規範は出題割合25%程度とされており、その母体は中小M&Aガイドラインである。母体の側で主語が書き分けられている以上、規範の内容を読むときに主語を落として覚えると、設問の立場が変わった瞬間に判断がずれる。

立場の違いが効くのは4科目のうち倫理・行動規範に偏る。検討会第4回資料2が示す出題割合は、M&A実務が35〜40%程度、財務・税務が20〜23%程度、法務が17〜18%程度、倫理・行動規範が25%程度である(現状案)。企業価値の算定手順や株式譲渡の手続は、担当者が仲介者であってもFAであっても内容が変わらない。仲介かFAかで読み方を変える必要があるのは、規範の主語が書き分けられている倫理・行動規範の領域である。

この書き分けが四肢択一でどう効くか

検討会第4回資料2は禁忌肢について「倫理・行動規範に著しく反するような支援者を排除する目的で、それを正しいと理解することに大いに問題がある誤答肢について、禁忌肢を設定する」と記載している(現状案)。同資料は「実際に支援機関と依頼者の間でトラブルに至った事例も参考に、中小M&Aガイドラインに明らかに違反するような行為や、トラブルに繋がる確度が相当に高い行為を、禁忌肢として設定」とも記載している。

禁忌肢の判定基準はガイドライン違反である。そのガイドラインの規律は、主語が仲介者かFAかで適用範囲が変わる。同じ行為を記述した選択肢でも、設問が受験者にどちらの立場を与えているかによって、評価の枠組みが変わる構造がここにある。

公表されている禁忌肢のサンプル問題は、設問の冒頭で「あなたは中小企業のM&Aを支援する仲介業者である。」と受験者の立場を指定している。立場が先に与えられる形式は、立場の一文を読み飛ばすと選択の基準を取り違えることを意味する。設問文の最初の一文を、条件として線を引いて読む習慣が要る。

登録制度の側では、FA業務と仲介業務は「又は」で束ねられる

検討会第4回資料2は、M&A支援機関登録制度の対象を「M&A支援機関のうち、ファイナンシャルアドバイザー(FA)業務又は仲介業務を行う者」と記載している。制度に入る入口では、2つの業務は「又は」で並べられている。登録の段階でどちらの業務かを選ぶ記述はあっても、制度そのものが2つに分かれているわけではない。

中小企業庁が2026年3月9日に公表した「登録FA及び仲介業者の公表」は、令和7年度公募(2月分)で登録されたFA及び仲介業者を165件(法人119件、個人事業主46件)とし、同時点の累計を3,399件(法人2,606件、個人事業主793件)としている。公表の見出しそのものが「FA及び仲介業者」であり、ここでも両者は並記されている。

制度は束ね、規範は書き分ける。この非対称が、仲介とFAの違いを中小M&A資格試験の側から見たときの要点である。売り手がどちらに依頼すべきかという論点とは、見る面が異なる。

受験準備での扱い方——立場を固定してから規範を読む

仲介業務を担当している読者は、利益相反の規律が自分の業務に直接かかるものとして第3版を読む。FA業務を担当している読者は、利益相反の具体化が仲介者を主語としていることを確認したうえで、営業・広告の規律のように仲介者・FAの双方が主語になっている箇所を拾う。どちらの立場でも、試験で問われるのは自社の慣行ではなく規範文言である。

検討会第4回資料2は「今後中小M&Aの仲介・FA業務を行おうとする者」も主な受験対象に含めている。実務経験の年数よりも、立場ごとに規律の範囲が変わることを理解しているかどうかが、倫理・行動規範の設問での分かれ目になる。経験が長い受験者ほど、自分が立ってきた側の規律だけを前提に読んでしまう余地がある。

次の一歩:自分の立場をひとつ決めて、その立場で診断を解く

今日できることは1つある。自分が仲介業務とFA業務のどちらの立場で実務をしているか、これからどちらを行おうとしているかをひとつ決め、無料の実力診断をその立場の支援者として最後まで解くことである。途中で立場を入れ替えないことが条件になる。

これに価値があるのは、中小M&Aガイドライン第3版が利益相反の規律を仲介者にだけ具体化し、営業・広告の規律を仲介者・FAの双方に置いているからである。誤答が出たときに、規範文言を知らなかったのか、立場を取り違えたのかを切り分けられると、読み直す先が第3版のどの規律かまで絞れる。無料登録をすると診断・模試の結果が保存され、次回以降の学習に使える。

中小M&A資格試験は、仲介業務とFA業務で受験区分が分かれますか。

2026年9月18日時点で、受験区分が分かれるかどうかは公表されていません。検討会第4回資料2は主な受験対象を「仲介・FA業務に関わる者及び今後中小M&Aの仲介・FA業務を行おうとする者」と一括して記載しており、両者を分ける記述は置かれていません。

FA業務しか担当していなくても、利益相反の論点は学習範囲に入りますか。

入ります。倫理・行動規範の母体は中小M&Aガイドラインであり、規律の主語が仲介者であっても、その内容が出題範囲の外に置かれるという記述はありません。主語が仲介者である規律と、仲介者・FAの双方が主語である規律を、区別して覚えることが要点です。

仲介者とFAの違いは、中小企業庁の公表資料で定義されていますか。

中小企業庁の中小M&Aガイドラインのページには、両者の違いを定義として説明する記述はありません。公表資料で確認できるのは、第3版の改訂内容で規律の主語が「仲介者」と「仲介者・FA」に書き分けられていることです。

今から何を準備すればいいですか。

自分が仲介業務とFA業務のどちらの立場かをひとつ決め、その立場のまま倫理・行動規範の設問を解くところから始めます。そのうえで、中小M&Aガイドライン第3版の改訂内容のうち、主語が「仲介者」の規律と「仲介者・FA」の規律を分けて書き出すと、設問で立場が変わったときの判断基準が残ります。