この記事の目次(10項目)
  1. M&A支援機関登録制度とは何か——事業者を登録して可視化する制度
  2. 登録FA・仲介業者は3,399件——担い手の規模
  3. 登録が事実上の参加条件になっている理由——事業承継・M&A補助金
  4. 中小M&A資格はどこで接続するのか——こちらは「個人」を登録する制度
  5. 資格側の登録・継続要件として示されているもの
  6. 第5回検討会(2026年7月21日)で示された登録・更新・取消の案
  7. 資格は支援機関登録の要件になるのか——2026年9月30日時点で未公表
  8. いま登録している事業者にとって、変わりうること/まだ何も決まっていないこと
  9. 時期の見通し——令和8・9年度に試験、令和10年度以降に登録運用
  10. 次の一歩:事業者の登録とは切り離して、個人として4科目の現在地を測る

M&A支援機関登録制度とは何か——事業者を登録して可視化する制度

M&A支援機関登録制度は、中小M&Aガイドラインの遵守の宣言等を登録要件として、中小企業庁がM&A支援を行うフィナンシャル・アドバイザー(FA)または仲介業者を登録する制度です。中小企業庁は制度の目的を、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築することだと説明しています。ここで押さえておきたいのは登録の単位です。登録されるのは事業者であって、個々の担当者ではありません。登録に際して担当者個人の知識や経験を試験で確認する仕組みは、この制度には含まれていません。中小M&A資格の位置づけを理解するうえで、この「単位」の話が出発点になります。 登録された事業者の情報は公表され、手数料の算定基準(最低手数料の水準や報酬基準額の種類等)をデータベース上で検索できます。あわせて、登録支援機関の支援に関するトラブルについて情報提供受付窓口が設置されており、中小M&Aガイドラインへの違反が認められた場合等には登録の取消しを可能とする運用が示されています。宣言によって入口を広く開けたうえで、違反があれば出口で取り消す。これが現在の制度の基本構造です。入口で個人の力量を測る設計にはなっていません。

登録FA・仲介業者は3,399件——担い手の規模

中小企業庁が令和8年3月9日に公表した内容によれば、登録FA・仲介業者は累計3,399件で、内訳は法人2,606件、個人事業主793件です。同じ公表では、令和7年度公募(2月分)だけで法人119件、個人事業主46件の計165件が新たに登録されたことが示されています。件数は公募のたびに積み上がっており、中小M&A支援の担い手が増え続けていることを示す実数です。1件の事業者に複数の担当者が所属することを考えれば、実際に依頼者と向き合う個人の数はこの件数をさらに上回ります。事業者単位の宣言だけで支援の質を担保し続けられるのか、という問いが資格試験の議論の前提にあります。

登録が事実上の参加条件になっている理由——事業承継・M&A補助金

事業承継・M&A補助金の専門家活用枠は、登録支援機関による支援の費用のみを補助対象としています。依頼者が補助金を使ってM&Aを進めたい場合、登録していない支援者に依頼すると、その費用は補助対象になりません。登録は法律上の免許ではなく、登録がなければM&A支援ができないわけでもありませんが、補助金の対象範囲を通じて実務上の参加条件として機能しているのが現状です。国が支援機関に働きかける手段として、禁止ではなく補助金の対象範囲と情報公表を用いてきた、という事実は、中小M&A資格の設計を読むうえでも参考になります。

中小M&A資格はどこで接続するのか——こちらは「個人」を登録する制度

中小M&A資格は、試験に合格した個人を登録する設計です。検討会第4回の資料は、試験制度と合格者登録制度を一体で運用する設計を示し、検討会第5回資料2(2026年7月21日)は、登録者検索システムで氏名・登録番号・登録年月日・所属先名を公表する案を示しています。登録の単位が事業者であるM&A支援機関登録制度とは、対象そのものが異なります。両者はいずれも中小企業庁の制度で、中小M&Aガイドラインを共通の土台にしていますが、現時点で公表されているのは二つの制度が並び立つところまでです。一方が他方を包含する関係や、両者のデータベースをどう突き合わせるかについては、公表資料に記載がありません。

二つの制度を項目ごとに並べると違いが見えます。登録の対象は、M&A支援機関登録制度が事業者、合格者登録制度が個人です。要件は、前者が中小M&Aガイドラインの遵守の宣言等、後者が試験の合格と講習の受講です。公表される内容は、前者が事業者名や手数料の算定基準、後者が資格保有者の氏名です。運用時期は、前者がすでに稼働中、後者が令和10年度以降の運用開始を想定しています。同じガイドラインを土台にしながら、確認の方法が「宣言」と「試験」で分かれているのが最大の違いです。

資格側の登録・継続要件として示されているもの

合格者登録制度の要件として第5回検討会資料2(2026年7月21日)に記載されているのは、試験合格、誓約書の提出(倫理・行動規範の遵守、取消事由に該当した場合の登録取消措置への同意等)、登録講習の修了、そして欠格事由に該当しないことの確認です。登録の継続期間は3〜5年が想定され、更新時には誓約書の提出と更新講習の修了が要件とされています。合格して終わりではなく、遵守と講習の継続によって登録を維持する設計になっています。更新講習を登録・継続要件に置く狙いについて資料は、試験合格者の知識の更新と、倫理・行動規範に対する遵守意識の醸成を挙げています。事業者向けの登録制度が「宣言と取消し」で構成されているのに対し、個人向けは「試験と継続教育」で構成される点が、二つの制度の性格の違いです。

出口の仕組みが両制度に用意されている点も共通しています。事業者側では、情報提供受付窓口に寄せられた情報などから中小M&Aガイドラインへの違反が認められた場合等に、登録の取消しが可能とされています。個人側では、倫理規程に違反した場合の処分(氏名公表等)に同意することが登録の要件として示されています。入口の確認方法は宣言と試験で異なりますが、違反があれば公表上の扱いを変えるという出口の考え方は共通です。資格の学習で倫理・行動規範の比重が高いのは、この出口の設計と対応しています。

第5回検討会(2026年7月21日)で示された登録・更新・取消の案

2026年7月21日の検討会第5回資料2では、資格の登録制度がさらに具体化されました。登録要件は、試験合格、誓約書の提出、登録講習の修了、欠格事由に該当しないことの確認の4点です。誓約書の内容としては、倫理・行動規範の遵守と、取消事由に該当した場合の登録取消措置への同意等が挙げられています。登録講習はM&A実務と倫理・行動規範等を内容とし、登録者管理システム内のE-learning形式を中心に、オンラインや対面の集合講習も検討するとされています。実務経験に応じて講習の免除等を行うことも検討事項として示されています。

資格・登録の有効期限は「期限なし、又は、3〜5年などの一定期間を設定」という2案が併記され、登録の継続期間は3〜5年が想定されています。更新時の要件は誓約書の提出と更新講習の修了です。第4回資料で「1〜2年ごと等」とされていた更新講習の間隔は、第5回資料では3〜5年ごとの更新講習という形で整理されました。欠格事由は他資格に共通する明らかなもの(行為能力・破産、刑罰歴・暴力団関係、再登録不可期間への該当)を踏襲する方針です。登録の取消は、欠格事由への該当、不正な手段による登録、資格者としての信頼を失墜させる不正・著しく不当な行為があったときが要件とされ、判断は中小企業庁が担い、必要に応じて弁護士等で構成する第三者委員会に諮ることが想定されています。

登録者は登録者検索システムで公表され、基本情報は氏名・登録番号・登録年月日・所属先名です。成約実績件数・M&A業務経験年数・保有資格・主要取扱業種は追加情報の候補として挙げられていますが、課題ありとして確定していません。これらはいずれも「想定」「案」「検討」と記された内容で、確定した制度ではありません。運用開始時期についての新しい記載はなく、第4回資料の令和10年度以降という想定が最新です。

資格は支援機関登録の要件になるのか——2026年9月30日時点で未公表

中小M&A資格の合格がM&A支援機関登録制度の登録要件になるかどうかは、2026年9月30日時点で公表されていません。合格者を何名擁していれば登録できるといった人数要件も公表されていません。すでに登録している事業者に経過措置が置かれるかどうかも公表されていません。公表資料から言えるのは、個人向けの合格者登録制度が設計されていること、その登録・管理制度の運用開始が令和10年度以降に想定されていること、この2点にとどまります。それ以上の踏み込みはすべて推測になります。 「資格が必須になる」と読める説明を見かけたら、根拠となる公表資料を確認してください。中小企業庁が公表しているのは、支援人材の知識と倫理を試験で確認し、合格者を登録・公表するという制度設計であって、M&A支援機関登録制度の登録要件を書き換える方針ではありません。当サイトは要件化に関する公式発表を監視し、公表され次第このページと更新履歴を更新します。

いま登録している事業者にとって、変わりうること/まだ何も決まっていないこと

変わりうるのは、支援の担い手の質を示す情報の粒度です。これまで公表されてきたのは、事業者単位の登録の有無と手数料の算定基準でした。合格者登録制度が動けば、これに個人単位の氏名公表が加わります。依頼者や金融機関が支援者を選ぶ際に参照できる情報が、事業者から担当者へと細かくなる方向です。要件化を待たずに社内で判断できることもあります。誰に受験させるか、いつから準備を始めるか、4科目のうちどこが自社の弱点かの把握は、いま着手できます。

一方でまだ何も決まっていないのは、要件化の有無、人数要件、既存従事者の扱い、試験の受験資格、そして試験日・受験料・申込方法です。これらはいずれも2026年9月30日時点で公表されていません。事業計画や人材計画に織り込む段階では、確定している情報と検討会資料の現状案を分けて扱ってください。なお、試験の実施体制については、2026年5月1日に中小企業庁が試験実施事業の委託先として株式会社銀行研修社を採択したことを公表しています。次の節目は試験案内の公表です。

個人の側から見ると、公表される情報の所在が変わります。M&A支援機関登録制度で公表されるのは所属先の事業者の情報であり、担当者個人が何を学び、どの規範を遵守すると表明しているかは、そこには現れません。合格者登録制度は、検討会第5回資料2の案では、登録者検索システムで氏名・登録番号・登録年月日・所属先名を公表する設計です。事業者側の登録情報との突き合わせ方については、2026年9月30日時点で公表資料に記載がありません。個人にとって何がどこまで公開されるのかは、試験案内および登録制度の詳細が公表される段階で確認する必要があります。

時期の見通し——令和8・9年度に試験、令和10年度以降に登録運用

検討会資料が示す想定は、令和8・9年度に中小企業庁の委託事業として試験を実施し、令和10年度以降に登録・管理制度の運用を開始する、という順序です。立ち上げ期には「年3回程度の複数の受験機会を設けた上で、一斉実施」が想定され、公募要領はその中から受験者が1つを選ぶ形を想定しています。試験の実施が令和8・9年度に想定され、登録運用が令和10年度以降に想定されている構成であるため、要件化されるかどうかにかかわらず、登録制度が動き出す前に合格しておく時間的な余地は制度上あります(公募要領は、年3回程度の試験実施日のうち受験者が受けられるのは1回のみという形を想定しています)。ただし各年度の具体的な実施日程は公表されていません。

資格がないとM&A支援機関の登録ができなくなりますか?

2026年9月30日時点で公表されていません。現在のM&A支援機関登録制度の登録要件は、中小M&Aガイドラインの遵守の宣言等です。中小M&A資格を登録要件に加えるという公表はありません。

M&A支援機関に登録していない会社の社員も受験できますか?

受験資格は2026年9月30日時点で公表されていません。検討会資料にも、所属先による受験制限を示す記載はありません。

資格を取ると補助金の対象になりますか?

事業承継・M&A補助金の専門家活用枠の補助対象は、登録支援機関による支援の費用です。中小M&A資格の有無が補助対象の範囲に影響するかどうかは公表されていません。

合格者の氏名は公表されるのですか?

検討会第5回資料2(2026年7月21日)は、登録者検索システムで氏名・登録番号・登録年月日・所属先名を公表する案を示しています。公表の開始時期と手続の詳細は2026年9月30日時点で公表されていません。

登録は個人と会社のどちらで行うのですか?

M&A支援機関登録制度は事業者単位、中小M&A資格の合格者登録制度は個人単位です。両者は別の制度として設計されています。

次の一歩:事業者の登録とは切り離して、個人として4科目の現在地を測る

今日できることは、所属先がM&A支援機関に登録しているかどうかとは別に、個人として4科目の正答率を測っておくことです。中小M&A資格の合格者登録は個人単位の制度として設計されており、試験は登録運用に先立って実施される想定のため、準備は個人の学習として今から進められます。無料会員登録をすると、20問精密診断と本番想定60問模試の結果が保存され、科目別の推移を追えます。