この記事の目次(10項目)
苦情事例は、検討会第4回資料2に列挙されている
中小M&A支援機関に関する苦情の具体的な事例は、中小企業庁が中小M&A市場改革検討会の第4回に提出した資料2に列挙されています。中小企業庁は、M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口で、支援機関に関する情報提供を受け付けています。資料2が示す事例は、窓口に寄せられた内容をもとに整理されたものです。
この事例群は、中小M&A資格試験の対策として読む価値があります。中小M&A資格試験の倫理・行動規範は、出題割合が約25%とされた科目です(現状案)。倫理・行動規範は、禁忌肢が設定される唯一の科目として資料2に記載されています。禁忌肢は、中小M&Aガイドラインに明らかに違反する行為や紛争を招きやすい行為を選択肢に含める想定です。実際に苦情として申告された行為は、その「明らかに違反する行為」が現場でどの形をとるかを示す材料になります。
以下では、資料2に挙げられた事例を、原文の記述に沿って整理します。中小企業庁は事例を2つの区分に分けて示していますが、本記事では区分の対応関係を記載しません。公表されたPDFからの抽出では区分と事例の対応が安定して読み取れないため、確認できた範囲にとどめます。
重要事項説明を行わないまま契約を締結した事例
資料2は、中小M&Aガイドラインが求める方式での重要事項説明を実施しないまま、専任条項と中途解約違約金条項のあるアドバイザリー契約を締結し、トラブルとなった事例を挙げています。専任条項は、依頼者が他の支援機関に重複して依頼することを制限する条項です。中途解約違約金条項は、依頼者が契約を途中で解約する際に金銭の支払いを求める条項です。
この事例で問題とされているのは、条項の存在そのものではなく、説明の手続が欠けたことです。中小M&Aガイドラインは、仲介契約・FA契約の締結に際して重要事項の説明を求めています。説明を欠いたまま依頼者の選択肢を狭める条項を結んだ点が、苦情に至った経路です。
説明と契約を電話のみで行った事例
資料2は、重要事項説明とアドバイザリー契約の締結を対面で実施せず、電話でこれを行い、十分な説明を受けられなかったというクレームに繋がった事例を挙げています。この事例は、説明を行った事実があっても、説明の方法によって苦情が生じうることを示しています。
倫理・行動規範の出題を読む際、「説明したかどうか」と「ガイドラインが求める方式で説明したかどうか」は別の論点として扱う必要があります。四肢択一では、説明を一度行った旨が選択肢に書かれていても、方式が欠けていれば不適切な行為に当たりえます。
専任条項がないのにテール条項に基づく請求を行った事例
資料2は、専任条項がないにも関わらず、依頼者から選択されなかった支援機関がテール条項に基づく請求を行う事例を挙げています。テール条項は、契約終了後の一定期間内に成立したM&Aについて、支援機関が手数料を請求できるとする条項です。
この事例の構造は、複数の支援機関に依頼できる状態で、最終的に関与しなかった支援機関が請求を行った点にあります。依頼者から見れば、一つの取引に対して複数の支援機関から請求が届く状態が生じます。中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAの手数料体系について依頼者への明示を求めています。
中間金が返還されなかった事例
資料2は、仲介が提示した企業概要書から譲渡価額が試算され、これに基づき支援機関が中間金を受領したものの、その後に企業価値を算出したところ当初の試算額を下回り、それでも中間金が返還されなかった事例を挙げています。中間金は、M&Aの成立前の一定の段階で支援機関が受領する手数料です。
この事例は、手数料の金額ではなく、金額の根拠が後から崩れたときの取扱いを問うものです。財務・税務の学習でバリュエーションを扱う際、算定結果が交渉の出発点であることと、算定結果に連動して受領した金銭の扱いは別の論点になります。
営業活動に関する事例——架電と郵便物
資料2は、架電にあたり、社長に取り次ぐよう10分以上電話口の担当者に執拗に迫り、最終的に一方的に通話を切断した事例を挙げています。資料2はまた、受電側から停止意思の表明を受けてもすぐに社内に共有される仕組みが構築されておらず、別の担当者から再度架電が実施された事例を挙げています。
後者の事例で問われているのは、個々の担当者の判断ではなく、組織の仕組みです。停止の意思表示を受け取る窓口と、架電を行う担当者の間に共有の経路がなければ、同じ結果が繰り返されます。倫理・行動規範の出題では、個人の行為と支援機関の体制が別々に問われる余地があります。
資料2は、個人名義を用いて会社名を出さず、営業先の社長の自宅宛てにゆうパックや「重要書類」と明記した郵便物を度々到達させた事例も挙げています。この事例は、受け手に開封を促す体裁を用いた点と、送り主の所属を明らかにしなかった点の両方を含みます。
再発防止基準を設けた後に同種の苦情が再発した事例
資料2は、過去にクレームを受けた支援機関が再発防止基準を設けたものの、再度同種の苦情が報告され、基準の内容の合理性に疑問がある事例を挙げています。この事例は、是正措置を講じた記録があることと、是正措置が機能したことが別であることを示しています。
中小M&A資格の登録制度では、登録者に対する措置として氏名の公表や登録の取消しが検討されています(現状案・検討会第5回資料2)。第5回資料2は、登録を取り消した事実等を登録者検索システム(仮称)で併せて公表することを想定しています。個人の登録に措置を結びつける設計は、支援機関単位の是正だけでは苦情が収まらなかった経緯と対応しています。
この事例群を倫理・行動規範の学習にどう使うか
事例群の使い方は、「知っているか」ではなく「選べるか」で確認することです。資料2の事例は、いずれも読めば不適切と分かる行為ではありません。専任条項や中途解約違約金条項、テール条項、中間金は、いずれもそれ自体が禁じられた仕組みではありません。苦情に至ったのは、説明の方式、依頼者の選択肢、金額の根拠が崩れた後の対応といった条件が重なった場面です。
四肢択一で禁忌肢を避けるには、条項名で反応するのではなく、説明が求められた方式で行われたか、依頼者が比較できる状態にあったか、受け取った金銭の根拠が維持されているか、という順で選択肢を読む必要があります。中小M&A資格の合格基準は、総得点と科目別の最低基準に加えて禁忌肢による不合格が置かれた3層構造とされています(現状案)。倫理・行動規範は、得点を積む科目ではなく、落とさない科目として扱う対象です。
2026年10月13日時点で公表されていないこと
中小M&A資格試験の試験日、受験申込方法、受験料、受験資格、合格率、受験者数、試験の正式名称、公式テキストは、2026年10月13日時点で公表されていません。禁忌肢として設定される選択肢の数、禁忌肢を何問選択した場合に不合格となるかの基準も、2026年10月13日時点で公表されていません。
資料2に挙げられた苦情事例が、そのまま出題されるとは公表されていません。資料2は、事例を試験の題材として示したものではなく、中小M&A市場の課題として示したものです。本記事は、禁忌肢の想定が「ガイドラインに明らかに違反する行為や紛争を招きやすい行為」とされていることと、その行為の実例が同じ資料に載っていることを結びつけて整理したものです。
次の一歩:8つの事例のうち、自分が「適切」と判断する型を特定する
今日できる行動を1つに絞ります。この記事で挙げた事例を、「選択肢として並んでいたら自分は不適切と選べるか」に置き換えて読み直し、判断に迷った型を書き出してください。そのうえで、無料模試の倫理・行動規範の問題を解き、書き出した型と実際に落とした問題が一致するかを確かめます。
この順番に価値があるのは、禁忌肢が総得点とは独立に不合格を決める仕組みとされているからです。迷った型を自覚しないまま問題数を増やしても、倫理・行動規範で落とす1問は残ります。無料登録をすると診断と模試の結果が保存され、次回以降の学習で前回どの型を落としたかを参照できます。
資料2に挙げられた苦情事例は、そのまま試験に出ますか。
出題されるとは公表されていません。資料2は事例を中小M&A市場の課題として示したものです。一方で中小M&A資格試験の禁忌肢は、中小M&Aガイドラインに明らかに違反する行為や紛争を招きやすい行為を選択肢に含める想定とされており、事例群はその行為の形を知る材料になります。
専任条項やテール条項は、結んではいけない条項ですか。
いいえ、条項自体が禁じられているとは公表資料に記載されていません。資料2の事例で苦情に至ったのは、重要事項説明を求められた方式で行わないまま専任条項と中途解約違約金条項を結んだ場合、および専任条項がない状態で選択されなかった支援機関がテール条項に基づく請求を行った場合です。
苦情はどこが受け付けていますか。
M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口が、支援機関に関する情報提供を受け付けています。中小企業庁は、同窓口に寄せられた内容をもとに苦情事例を検討会第4回資料2で整理しています。
苦情を出した支援機関の名前は公表されますか。
資料2は事例を支援機関名を伏せた形で示しています。個人の登録については、検討会第5回資料2が、登録者に対する措置として氏名の公表や登録の取消しを検討し、取消しの事実等を登録者検索システム(仮称)で公表することを想定しています。いずれも現状案であり、運用開始時期は2026年10月13日時点で公表されていません。
今から何を準備すればいいですか。
倫理・行動規範を「落とさない科目」として先に固めてください。具体的には、本記事の事例を選択肢の形に置き換えて判断に迷う型を書き出し、無料模試の倫理・行動規範で実際に落とす問題と照合します。試験日が未公表の段階でも、禁忌肢を避ける読み方の訓練は公表済みの資料だけで進められます。