この記事の目次(12項目)
- デューデリジェンスは、出題範囲一覧で3つの科目に分かれて置かれている
- M&A実務側の大項目は「DD(全体)」と「DD(個別)」の2つ
- 「DD(全体)」の中項目は3つ——方針・体制・準備の順に並ぶ
- 「DD方針の決定」の小項目4つ——種類・スケジュール・範囲・機関
- 「DDの体制構築」の小項目2つ——譲り渡し側と譲り受け側を分けている
- 「調査実施前の準備」の小項目4つ——データルームと依頼資料リスト
- 「DD(個別)」の中項目は4つ——財務・税務/法務/人事・労務/その他
- 個別DDの小項目は、どの種別も同じ2つ
- 財務・税務側と法務側は「調査事項に関する知識」として置かれている
- 3つの科目に分かれていることが、対策上どう効くか
- 出題範囲一覧に書かれていないこと
- 次の一歩:模試のDD設問の誤答を「手続」と「調査事項の知識」に仕分ける
デューデリジェンスは、出題範囲一覧で3つの科目に分かれて置かれている
中小企業庁が中小M&A市場の改革に向けた検討会(第4回)で示した出題範囲一覧では、デューデリジェンス(DD)に関する項目がM&A実務・財務・税務・法務の3つの科目に分かれて置かれています。3つの科目は、DDの同じ側面を重ねて問う形にはなっていません。M&A実務の科目はDDを進める手続を、財務・税務の科目と法務の科目はDDで扱う調査事項の知識を、それぞれ別の単位で切り出しています。したがって「DDは財務の話だから財務・税務の科目だけ見ておけばよい」という整理は、出題範囲一覧の構造と合いません。
この形は、同じ出題範囲一覧でバリュエーションが二か所に置かれているのと似ています。違いは、DDが三か所に広がっている点と、M&A実務側だけで大項目が2つに割られている点です。以下では出題範囲一覧に書かれた項目名だけを使い、DDがどこにどう置かれているかを確認します。この記事は、出題範囲一覧に記載のない一般的なDD実務の手順書ではありません。
M&A実務側の大項目は「DD(全体)」と「DD(個別)」の2つ
M&A実務の科目には、DDに関する大項目が2つ置かれています。「DD(全体)」と「DD(個別)」です。「DD(全体)」はDDを始める前と始めるときの段取りを扱い、「DD(個別)」はDDの種別ごとの中身を扱います。大項目が2つに割られていること自体が、この試験がDDを「どの種類をどう走らせるか」と「各種類で何を見るか」の二層で捉えていることを示しています。
「DD(全体)」の中項目は3つ——方針・体制・準備の順に並ぶ
「DD(全体)」の中項目は、「DD方針の決定」「DDの体制構築」「調査実施前の準備」の3つです。3つは時間の順に並んでいます。何をやるかを決め、やる人を集め、やる場所と材料を整える、という順序です。順序が範囲表の並びとして残っているため、工程の前後を入れ替えた選択肢は、出題範囲一覧の並びと照らして判断できます。
「DD方針の決定」の小項目4つ——種類・スケジュール・範囲・機関
「DD方針の決定」の小項目は4つです。「実施するDD(財務・税務、法務、ビジネス、IT、環境、不動産、等)の種類の検討」「スケジュールの策定」「個別DDの実施範囲の検討・確定」「個別DDの実施機関の選定」が並びます。1つ目の小項目には、括弧の中にDDの種類が列挙されています。財務・税務と法務のほかにビジネス、IT、環境、不動産が挙がり、「等」で閉じられています。この試験は、財務と法務だけがDDではないという前提に立っています。
4つの小項目は、支援者が自分で調査を行う作業ではなく、決める作業です。実施範囲を確定するのも実施機関を選ぶのも、調査そのものではありません。DDを「調べる仕事」としてだけ覚えていると、この中項目の設問には手が届きません。
「DDの体制構築」の小項目2つ——譲り渡し側と譲り受け側を分けている
「DDの体制構築」の小項目は2つで、「DDチームの構築(譲り渡し側)」と「DDチームの構築(譲り受け側)」です。同じ「チームの構築」でありながら、譲り渡し側と譲り受け側が別の小項目として立てられています。立場が違えばDDで負う役割が違う、という切り分けが範囲表の段階で行われています。譲り渡し側は資料を出す側、譲り受け側は調べる側という非対称が、小項目の分け方に表れています。
「調査実施前の準備」の小項目4つ——データルームと依頼資料リスト
「調査実施前の準備」の小項目は4つです。「データルーム・バーチャルデータルームの設置」「情報連携のための前準備」「依頼資料リスト、開示情報の共有・管理」「マネジメントインタビュー・サイトビジット等の調整」が並びます。4つに共通するのは、情報を安全に受け渡すための段取りである点です。データルームの設置も開示情報の管理も、誰がどの情報にいつ触れるかを制御する作業で、倫理・行動規範が扱う情報管理と地続きになります。
「DD(個別)」の中項目は4つ——財務・税務/法務/人事・労務/その他
「DD(個別)」の中項目は4つで、「財務・税務DD」「法務DD」「人事・労務DD」「その他DD」です。注意すべきは、財務と税務が1つの中項目にまとめられている点と、人事・労務が独立した中項目として立っている点です。人事・労務DDはM&A実務の科目に置かれている一方で、対応する独立の科目がありません。科目名から出題範囲を逆算すると抜け落ちる位置にあります。
個別DDの小項目は、どの種別も同じ2つ
「DD(個別)」の4つの中項目は、いずれも同じ2つの小項目を持ちます。「実施目的及び主な調査項目」と「主な検出事項及びその対応方法」です。2つがすべての種別に共通して置かれているということは、種別ごとに覚える形が同じだということです。種別ごとに「何のためにやるのか」「何を見るのか」「何が出てくるのか」「出てきたらどうするのか」の4点を揃えれば、4つの中項目を同じ型で処理できます。
「主な検出事項及びその対応方法」が小項目として置かれている点は見落としやすい箇所です。DDは問題を見つけて終わる工程としては切られておらず、見つけたものをその後の条件にどう反映するかまでが範囲に入っています。この部分は最終契約の表明保証や補償の論点と接続します。
財務・税務側と法務側は「調査事項に関する知識」として置かれている
財務・税務の科目には、「財務DD」と「税務DD」が別々の項目として置かれています。小項目はそれぞれ「調査事項に関する財務知識」と「調査事項に関する税務知識」です。法務の科目には「法務DD」が置かれ、小項目は「調査事項に関する法律知識」です。3つに共通するのは、項目名が工程ではなく知識を指している点です。
M&A実務側で「財務・税務DD」という1つの中項目だったものが、財務・税務の科目側では「財務DD」と「税務DD」に分かれています。同じDDが、置かれる科目によって粒度を変えています。M&A実務側は案件を進める順序の中にDDを置くため財務と税務をまとめ、財務・税務側は必要な知識の種類でDDを切るため財務と税務を分ける、という違いです。どちらが正しいかではなく、問われ方が違います。
3つの科目に分かれていることが、対策上どう効くか
DDの設問で失点したとき、原因は手続側と知識側のどちらかに分かれます。手続側の失点は、DDの順序、関与する主体、実施前に整えるものを取り違えたときに起きます。知識側の失点は、調査事項そのもの——どの財務数値を見るか、どの税務上の論点が残るか、どの契約条項が引っかかるか——を知らなかったときに起きます。2つは復習の方法が別です。
手続側は、出題範囲一覧の項目名をそのまま並べ直せば形になります。方針を決め、体制を組み、準備をし、種別ごとに調べる、という順序と、各段階の小項目を押さえれば足ります。知識側は、財務・税務と法務のそれぞれの科目学習に吸収されます。DDのための独立した学習時間を別に確保するより、M&A実務の工程学習で手続側を、財務・税務と法務の科目学習で知識側を回収するほうが、出題範囲一覧の構造に沿います。
一方で、人事・労務DDとその他DDには対応する科目がありません。この2つはM&A実務の科目の中で処理するほかなく、他の科目の学習からは回収できません。DDの取りこぼしが起きるとすれば、まずここです。
出題範囲一覧に書かれていないこと
出題範囲一覧には、各項目から何問出題されるかの記載はありません。DDに関する項目が何問に相当するかも示されていません。また「実施目的及び主な調査項目」の具体的な中身——どの調査項目が問われるか——は項目名が置かれているだけで、内容までは書かれていません。
試験日・受験申込方法・受験料・受験資格は、2026年10月7日時点で公表されていません。委託先の採択結果は2026年5月1日に公表され、株式会社銀行研修社が選定されたことが明らかになっていますが、同じページに試験日・受験料・申込方法の記載はありません。公式テキストも公表されていないため、DDの対策は出題範囲一覧の項目名を起点に組み立てることになります。
次の一歩:模試のDD設問の誤答を「手続」と「調査事項の知識」に仕分ける
この記事を読んだあとに今日できることは1つです。無料模試のうちDDに関する設問を解き、誤答を「手続を取り違えた」と「調査事項の知識が無かった」の2つに仕分けてください。手続側に偏っていればM&A実務の工程学習へ、知識側に偏っていれば財務・税務と法務の科目学習へ、戻る先が決まります。DDは3つの科目に分かれて置かれているため、どちらに寄っているかを見ないまま復習すると、空いている側がそのまま残ります。
無料登録をすると診断・模試の結果が保存され、次回以降の学習に使えます。同じ仕分けを2回目の模試でもう一度行えば、手続側と知識側のどちらが動いたかを前回の結果と並べて比べられます。
中小M&A資格試験でDDはどの科目から出題されますか。
M&A実務・財務・税務・法務の3つの科目に分かれて置かれています。M&A実務の科目には「DD(全体)」と「DD(個別)」の2つの大項目があり、財務・税務の科目には「財務DD」「税務DD」、法務の科目には「法務DD」が置かれています。
財務DDと税務DDは別々の項目ですか。
置かれている科目によって扱いが変わります。M&A実務の科目では「財務・税務DD」という1つの中項目ですが、財務・税務の科目では「財務DD」「税務DD」として別々に置かれ、小項目はそれぞれ「調査事項に関する財務知識」「調査事項に関する税務知識」です。
人事・労務DDやその他DDも出題範囲に入っていますか。
入っています。「DD(個別)」の中項目は「財務・税務DD」「法務DD」「人事・労務DD」「その他DD」の4つで、いずれも「実施目的及び主な調査項目」「主な検出事項及びその対応方法」の2つの小項目を持ちます。人事・労務DDとその他DDには対応する独立の科目がないため、M&A実務の科目の中で扱うことになります。
DDの対策として今から何を準備すればいいですか。
自分のDDの理解が手続側と知識側のどちらに寄っているかを先に確かめてください。無料模試のDD設問を解き、誤答を「手続の取り違え」と「調査事項の知識不足」に仕分ければ、M&A実務の工程学習に戻るべきか、財務・税務と法務の科目学習に戻るべきかが決まります。