この記事の目次(10項目)
  1. バリュエーションは、出題範囲一覧で二か所に置かれている
  2. M&A実務側のバリュエーション——小項目3つはいずれも工程の名前
  3. 財務・税務側のバリュエーション——小項目1つは知識の名前
  4. 二か所にあることが、対策上なぜ効くのか
  5. 並びの位置——M&A実務ではマッチングの直前にある
  6. 出題割合から見た重み——両方の科目にまたがる
  7. 科目別最低基準50%との関係——片側だけ対策すると残る側
  8. 出題範囲一覧に書かれていないこと
  9. 学習の手順——二つの入口に別々に当たる
  10. 次の一歩:模試のバリュエーション誤答を、工程側と知識側に仕分ける

バリュエーションは、出題範囲一覧で二か所に置かれている

中小M&A資格試験の出題範囲一覧には、「バリュエーション」という中項目が二つあります。中小企業庁が検討会第4回の資料3として公表した出題範囲一覧では、M&A実務の科目に中項目「バリュエーション」が置かれ、財務・税務の科目にも同じ名前の中項目が置かれています。2026年9月24日時点の公表資料で確認できる並びです。

科目別に対策する学習者は、この二か所を別々の論点として扱うことになります。出題範囲一覧は科目ごとに中項目と小項目を並べた表で、科目をまたいで同じ名前の中項目が現れる箇所は限られます。バリュエーションはその一つです。

同じ名前でも、下に並ぶ小項目は一致しません。この非対称が、価値算定の対策を組む際の出発点になります。

M&A実務側のバリュエーション——小項目3つはいずれも工程の名前

M&A実務の中項目「バリュエーション」の下には、「実施方針の決定」「調査・情報収集」「金額の算定」の3つの小項目が置かれています。2026年9月24日時点の出題範囲一覧で確認できる小項目名です。

3つの小項目は、いずれも作業の段階を指す名前です。「実施方針の決定」は算定に入る前に何をどこまでやるかを決める段階、「調査・情報収集」は算定の材料を集める段階、「金額の算定」は集めた材料から数字を出す段階を指します。数字を出す作業は3つのうち最後の1つだけです。

この並びは、支援者が価値算定を進める順序をそのまま項目名にした構造になっています。中小企業庁が公表した中小M&Aガイドラインは、支援者が各工程で何をすべきかを行動の順に整理した文書であり、出題範囲一覧のM&A実務側はその工程の順序と対応する形で並んでいます。

財務・税務側のバリュエーション——小項目1つは知識の名前

財務・税務の中項目「バリュエーション」の下に置かれた小項目は、「バリュエーションに関する財務知識」の1つです。2026年9月24日時点の出題範囲一覧で確認できる表記です。

小項目名が「知識」で終わる点は、財務・税務の科目全体に共通します。同じ科目には「簿記の基礎知識」「企業会計の基礎知識」「税務会計の基礎知識」といった小項目が並び、財務DDの中項目には「調査事項に関する財務知識」、最終契約の中項目には「譲渡額に関する財務知識」が置かれています。財務・税務の側は、工程ではなく知識の単位で範囲が切られています。

したがって、財務・税務側のバリュエーションは、算定の手順を追う項目ではなく、算定に必要な財務の知識を問う項目として置かれています。

二か所にあることが、対策上なぜ効くのか

同じ論点が工程側と知識側の両方に置かれているため、価値算定の失点は二種類に分かれます。一方は、算定に必要な財務の考え方を持っていないために数字が出せない失点です。もう一方は、数字は出せるのに、どの方針でどこまで調べたうえでその数字を出したのかを説明できない失点です。

この二つは、戻る先の科目が違います。前者は財務・税務の小項目「バリュエーションに関する財務知識」に戻る失点で、後者はM&A実務の小項目「実施方針の決定」「調査・情報収集」に戻る失点です。同じ「バリュエーションが苦手」という自覚から出発しても、復習すべき範囲は重なりません。

計算演習だけを積み上げる進め方は、このうち片側にしか効きません。逆に、工程の流れだけを覚える進め方も片側にしか効きません。出題範囲一覧が二か所に置いている以上、対策も二本立てになります。

並びの位置——M&A実務ではマッチングの直前にある

M&A実務の中項目の並びで、バリュエーションはマッチングの直前に置かれています。2026年9月24日時点の出題範囲一覧で確認できる順序です。

マッチングの中項目には、ノンネームシートの作成・確認、企業概要書の作成・確認、ロングリストの作成・提案、ショートリストの作成・提案といった小項目が並びます。相手候補を探して当たる作業の一式です。出題範囲一覧では、その作業に入る前にバリュエーションが置かれています。

順序を取り違えると、設問の前提を読み違えます。相手候補が決まってから金額を考える順序で工程を覚えていると、「候補先へのアプローチの前に済ませておくべき作業はどれか」という形式の設問で選択肢の絞り込みができません。工程の設問は、作業の中身ではなく作業の位置を問う形で作ることができます。

出題割合から見た重み——両方の科目にまたがる

検討会第4回の資料2は、科目毎の出題割合の現状案として、M&A実務を35〜40%程度、財務・税務を20〜23%程度、法務を17〜18%程度、倫理・行動規範を25%程度と示しています。設問数60問程度という現状案に当てはめると、M&A実務が21〜24問程度、財務・税務が12〜14問です。

バリュエーションは、この二つの科目の双方に中項目として置かれた論点です。M&A実務と財務・税務を合わせると出題割合は55〜63%程度になり、価値算定はその両側に足がかかっています。ただし、中項目ごとの配点は公表されていません。中項目が二か所にあることは、配点が二倍になることを意味しません。

確実に言えるのは、片側の科目でこの論点を落としても、もう片側の科目の得点では埋め合わせられないということです。科目は別々に集計されます。

科目別最低基準50%との関係——片側だけ対策すると残る側

検討会第4回の資料2は、合格基準の現状案として、総得点の70〜80%程度と、科目別合格最低基準50%程度の二つを示しています。科目別の基準は科目ごとに判定されるため、ある科目で基準を割ったとき、他科目の得点では補えません。

財務・税務は12〜14問という設問数のため、1問あたりが50%基準に与える影響が大きい科目です。ここでバリュエーション関連を落とすと、簿記や税務の他項目で取り返す余地が狭くなります。M&A実務は21〜24問程度と設問数が多い分、1問の影響は相対的に小さくなりますが、工程を問う設問は範囲全体に分散するため、バリュエーションの工程だけを飛ばしても他の中項目で埋まるとは限りません。

この論点を片側だけ対策する進め方は、対策していない側の科目に未処理のまま残ります。残った側が科目別基準の判定を受ける科目である以上、二本立てにしておくほうが基準の割れ方を減らせます。

出題範囲一覧に書かれていないこと

出題範囲一覧には、特定の算定手法の名前が小項目として置かれていません。2026年9月24日時点で確認できるのは、M&A実務側の3つの工程名と、財務・税務側の「バリュエーションに関する財務知識」という表記までです。どの手法を何通り扱うかは公表されていません。

公式テキストは2026年9月24日時点で公表されていません。試験日・受験申込方法・受験料・受験資格・試験の正式名称も、同じく公表されていません。手法の範囲を確定させたい場合、待つべき情報は公式テキストの公表です。

手法名が示されていない状態で手法を網羅しにいくと、範囲は際限なく広がります。出題範囲一覧が名前を与えているのは工程と知識の区分までで、その区分に沿って準備するほうが、公表された範囲の内側にとどまります。

学習の手順——二つの入口に別々に当たる

手順は4段階に分けられます。第一に、M&A実務側の3つの小項目名を、自分の言葉で作業として説明できる状態にします。実施方針の決定で何を決めるのか、調査・情報収集で何を集めるのか、金額の算定がその後に来る理由は何かの3点です。

第二に、財務・税務側の「バリュエーションに関する財務知識」を、同じ科目の他の小項目と並べて位置づけます。簿記・企業会計・税務会計・原価計算・資金管理・会計基準という基礎の小項目が同じ科目にあり、バリュエーションの財務知識はその上に乗ります。基礎側が抜けていると、算定の知識だけを足しても安定しません。

第三に、工程の位置を並びで覚えます。バリュエーションがマッチングの直前にあることを、順序として記憶します。第四に、演習で出た誤答を、工程側と知識側のどちらの失点かで仕分けます。仕分けができて初めて、次にどちらの科目に時間を配分するかが決まります。

次の一歩:模試のバリュエーション誤答を、工程側と知識側に仕分ける

今日できることは1つです。無料の模試を解き、バリュエーションに関わる誤答を「金額の出し方を間違えた」と「どの方針で、どの情報をもとに算定するかを間違えた」の二つに分けてください。前者は財務・税務の「バリュエーションに関する財務知識」に戻る誤答、後者はM&A実務の「実施方針の決定」「調査・情報収集」に戻る誤答です。

この仕分けに意味があるのは、出題範囲一覧がこの論点を二つの科目に分けて置いており、科目別最低基準50%程度が科目ごとに判定される現状案だからです。どちら側で外しているかが分からないまま演習量だけ増やすと、基準を割っている側が最後まで残ります。無料登録をすると診断・模試の結果が保存され、次回以降の学習に使えます。

中小M&A資格試験でバリュエーションはどの科目に出ますか。

M&A実務と財務・税務の二つの科目に出ます。出題範囲一覧では、両方の科目に中項目「バリュエーション」が置かれています。M&A実務側の小項目は「実施方針の決定」「調査・情報収集」「金額の算定」の3つ、財務・税務側の小項目は「バリュエーションに関する財務知識」の1つです。

どの算定手法を勉強すればよいですか。

出題範囲一覧には手法名の小項目が置かれていないため、公表資料からは手法を特定できません。2026年9月24日時点で公式テキストも公表されていません。公表されているのは、M&A実務側の3つの工程名と、財務・税務側の「バリュエーションに関する財務知識」という表記までです。

財務・税務が得意なら、バリュエーションは対策しなくてよいですか。

財務・税務側の対策だけでは、M&A実務側の3つの小項目が残ります。M&A実務側は算定の工程を問う項目で、財務の知識とは別に置かれています。科目別最低基準は科目ごとに判定される現状案のため、一方の科目の得点でもう一方を補うことはできません。

バリュエーションは出題範囲のどの位置にありますか。

M&A実務の中項目の並びでは、マッチングの直前に置かれています。マッチングにはノンネームシートや企業概要書の作成・確認、ロングリスト・ショートリストの作成・提案といった小項目が並びます。相手候補を探す作業より前に置かれている順序です。

今から何を準備すればよいですか。

模試や演習で出たバリュエーション関連の誤答を、金額の出し方を外した誤答と、算定の方針や情報収集を外した誤答の二つに分けてください。前者は財務・税務、後者はM&A実務に戻る誤答で、次に時間を割く科目がそこで決まります。仕分けの前に手法を網羅しようとすると、公表されていない範囲まで広がります。