この記事の目次(8項目)
「実務能力・倫理」という名称は、試験の2本柱をそのまま表している——45問程度と15問程度
中小M&A資格試験(正式名称:中小企業M&A実務能力・倫理検定試験)の名称にある2本柱は、出題数の配分にそのまま対応しています。2026年10月30日に経済産業省・中小企業庁が発表した出題数は全60問程度で、内訳はM&A実務22問程度(中小M&A市場動向・中小企業政策関連を含む)、財務・税務13問程度、法務10問程度、倫理・行動規範15問程度です(発表値・確定)。このうち前の3科目を合計すると45問程度で全体の75%、倫理・行動規範は15問程度で25%になります(当サイトの計算)。名称の「実務能力」は前者の3科目、「倫理」は後者の1科目が担う、というのが本記事の読み方です。試験は令和9年(2027年)1月28日(木)〜30日(土)のうち任意の1日に、CBT方式・120分・多肢選択式(四肢択一)で行われ、年齢・学歴等に関係なく誰でも受検できます(発表値・確定)。
図のとおり、2本柱は出題数が3対1で、測り方も違います。実務能力の3科目は、案件の工程・計算・法律の要件という「知識をあてはめる力」を四肢択一で問い、公表されたサンプル問題もスキーム選択の比較判断、フリー・キャッシュ・フローの算定、契約条項の効力判断という型でした(検討会第4回資料2・2026年3月17日)。倫理は、中小M&Aガイドライン第3版の行動指針を母体に「その場面で支援者がどう動くべきか」を事例で問い、検討会資料では4科目のうち唯一、禁忌肢の設定方針が示された科目です(検討会資料の想定・現状案。10月30日の発表資料に禁忌肢の記載はありません)。以下、各柱で何を測るかを順に見ていきます。
「実務能力」で測ること——M&A実務・財務・税務・法務の3科目45問程度
実務能力の柱は、案件を最初から最後まで進めるために必要な知識を3科目に分けて測ります。M&A実務(22問程度)は、事前相談・秘密保持契約・アドバイザリー契約からバリュエーション・マッチング・意向表明/基本合意・DD・最終契約・クロージング・クロージング後(PMI)までの工程と、中小M&A市場動向・中小企業政策関連が範囲です(出題科目詳細)。財務・税務(13問程度)は、財務3表、企業価値評価の3手法(コスト・マーケット・インカム)、株式譲渡の課税、財務DD・税務DDが素材で、公表サンプルでは営業利益から出発してフリー・キャッシュ・フローを算定する計算問題(正答25百万円)が示されました(検討会第4回資料2)。法務(10問程度)は、会社法の手続、契約の基礎、最終契約の条項、弁護士法の独占業務の境界が範囲で、公表サンプルは最終契約の免責条項の効力を判断させる問題でした(出題科目詳細・検討会第4回資料2)。出題に適用される法令・制度の基準日は令和8年3月末日です(出題科目詳細)。
| 科目 | 出題数(発表値・確定) | 主な素材(出題科目詳細をもとにした当サイトの整理) | 公表サンプルの型(検討会第4回資料2) |
|---|---|---|---|
| M&A実務 | 22問程度 | 事前相談からクロージング後(PMI)までの工程、中小M&A市場動向・中小企業政策 | スキーム選択の比較判断 |
| 財務・税務 | 13問程度 | 財務3表、企業価値評価の3手法、株式譲渡の課税、財務DD・税務DD | フリー・キャッシュ・フローの算定(正答25百万円) |
| 法務 | 10問程度 | 会社法の手続、契約の基礎、最終契約の条項、弁護士法の独占業務の境界 | 契約条項(免責)の効力判断 |
| 実務能力の合計 | 45問程度(75%・当サイトの計算) | 法令・制度の基準日は令和8年3月末日 | — |
実務能力の3科目に共通するのは、知識そのものではなく「あてはめ」を問う設計です。スキーム選択は複数の方式を同じ条件で比べる判断、計算問題は工程を1つ落とすと誤答肢の値になる構造、免責条項は条項の文言を要件にあてはめる判断で、いずれも用語の暗記だけでは解けません(公表サンプルからの当サイトの読み方)。
「倫理」で測ること——倫理・行動規範15問程度、母体は中小M&Aガイドライン第3版
倫理の柱は、倫理・行動規範の1科目15問程度で、出題の母体は中小企業庁が2024年8月30日に公表した中小M&Aガイドライン第3版です(検討会第4回資料2が倫理・行動規範の科目を「中小M&Aガイドライン等」と示しています。出題科目詳細にガイドラインの名称の記載はありません)。出題科目詳細の倫理・行動規範に並ぶ中項目・小項目は、使命/仲介者・FAの選定等/基本原則/善管注意義務・職業倫理/広告・営業/品位/法令等の遵守/不適切な個人・組織・反社等との関係/情報管理/その他禁止行為/支援機関向けの基本姿勢です。論点になるのは、利益相反の管理、秘密保持と情報管理、直接交渉の制限、専任条項・テール条項の適正化、不適切な譲り受け側の排除、反社会的勢力との関係遮断といったガイドライン第3版の行動指針で、知っているかではなく、その場面で支援者がどう動くべきかを事例で判断させる設計です。公表された正式サンプルは、資格を持たない支援者が適法に行えない行為を判定させる独占業務の境界判定の問題で、参考問題として示された禁忌肢の例は、譲り受け側と反社会的勢力との交友関係を確認しながら、成約や手続の進行を優先して依頼者に説明せず取引を進める行為でした(検討会第4回資料2)。
倫理の柱が実務能力の柱と決定的に違うのは、検討会資料で4科目のうち唯一、禁忌肢の設定方針が示された科目である点です(検討会資料の想定・現状案)。禁忌肢を設定した設問を複数設け、その一定数を誤答した場合に不合格とする設計が想定され、目的は「倫理・行動規範に著しく反するような支援者を排除する」ことと記載されています(検討会第4回資料2)。設問数と不合格となる誤答数は2026年11月2日時点で公表されておらず、10月30日の発表資料にも禁忌肢の記載はありません。論点ごとの対策は当サイトの倫理・行動規範の科目別対策の記事に譲ります。
なぜ1つの試験で「実務能力」と「倫理」を測るのか——名称の変遷から読む
正式名称が決まったのは2026年10月30日で、それまでの中小企業庁の資料では別の表記でした。2026年3月17日の検討会第4回資料2では「中小M&A資格試験(仮称)」として4科目・60問程度・120分・CBTの制度案と合格基準の想定が示され、3月27日の公募要領は「中小M&A資格試験実施事業」として委託先を公募し、5月1日に委託先として株式会社銀行研修社の採択が公表され、10月30日の発表で「中小企業M&A実務能力・倫理検定試験」という試験名と試験日が確定しました(検討会第4回資料2・公募要領・採択結果・発表資料)。
図のとおり、名称は検討会での仮の呼び方から委託事業名を経て正式名称に落ち着き、その過程で「資格試験」という語が「実務能力・倫理検定試験」に置き換わりました。検討会第4回資料2が4科目の1つとして倫理・行動規範を置き、禁忌肢をその科目だけに設定する方針を示していたことを踏まえると、正式名称は、知識の試験に倫理の試験を並べた設計を試験名そのものに明示した形です(当サイトの読み方)。「中小M&A資格試験」「中小M&Aアドバイザー試験」は検索で使われる通称で、発表されている試験名は正式名称だけです。運営主体は中小企業庁、事務局は委託先の株式会社銀行研修社で、受検申込の方法や受検料は11月中に公表する受検案内で示すと発表資料に書かれています(発表資料・採択結果)。通称と正式名称の対照は、当サイトの名称整理の記事で扱っています。
2本柱は合否判定でも分かれる——検討会資料の想定(現状案)
合格基準は2026年11月2日時点で公表されていません(10月30日の発表資料に記載なし)。検討会第4回資料2(2026年3月17日)が想定として示した合格基準は、総得点70〜80%程度、科目別50%、禁忌肢の3層です(検討会資料の想定・現状案)。この3層を2本柱に重ねると、総得点と科目別50%は4科目すべてにかかる一方、禁忌肢は倫理・行動規範だけに設定する方針なので、倫理の柱には関門が1つ多く置かれています。科目別50%を倫理・行動規範15問程度にあてはめると8問前後が目安です(当サイトの算出値。問題数が変われば変わります)。
この構造は、「実務能力で高得点を取って倫理を補う」という戦略が成り立たないことを意味します。総得点が想定の水準に達していても、倫理・行動規範が科目別50%を下回れば不合格になり得る設計で、さらに禁忌肢を一定数誤答した場合も不合格とする設計が想定されているためです(検討会資料の想定・現状案)。逆に、倫理だけを固めても、実務能力の3科目のどれかが50%を下回れば同じ結果になります。合否判定は公募要領で後日判定・初回は相対評価が想定され、合格通知書は合格発表日以降に簡易書留で発送するとされていますが、合否発表の時期・方法は2026年11月2日時点で公表されていません(公募要領の想定・発表資料に記載なし)。
2本柱それぞれの準備——素材はどちらも無料の一次資料(当サイトの学習案)
2本柱は素材も準備の型も違うため、当サイトでは柱ごとに「読む・解く・確かめる」の3段階で準備することを提案しています(当サイトの学習案で、公式の計画ではありません)。実務能力の素材は出題科目詳細の大項目・中項目・小項目の一覧、倫理の素材は中小M&Aガイドライン第3版で、どちらも中小企業庁が公開している無料の一次資料です。公式テキスト・公式講座は2026年11月2日時点で公表されておらず、初回のため過去問も存在しません。
図のとおり、実務能力の柱は「読む」で出題科目詳細の小項目を確認し、「解く」で公表サンプル正式4問の型(スキーム選択・フリー・キャッシュ・フローの算定・契約条項の効力判断・独占業務の境界判定)を自分で再現し、「確かめる」で20問精密診断の科目別正答率を見て低い科目から埋めます。独占業務の境界判定は倫理・行動規範のサンプルですが、弁護士法の境界は法務の範囲にもある横断領域なので、実務能力の側でも解いておく位置づけです。倫理の柱は「読む」でガイドライン第3版の支援機関向けの行動指針を通読し、「解く」で参考問題の型、つまり事例の中で最も適切な対応を選び、禁忌肢にあたる行為を見抜く練習をし、「確かめる」で60問模試の倫理・行動規範の正答率を科目別50%(検討会資料の想定)と照らします。無料で解ける問題は10問クイック診断・20問精密診断・60問模試の合計78問で、10問クイック診断は登録不要、20問精密診断と60問模試は無料会員で利用できます。演習量がもっと必要な人向けに有料の合格対策パックもありますが、まず無料の範囲で2本柱の現在地を知ることが先です。
2026年11月2日時点で公表されていないこと——2本柱の準備に関わるもの
試験名と出題数は確定しましたが、合格基準(配点・合格点)、禁忌肢の設問数と不合格となる誤答数、受検料、申込受付期間と申込方法、会場ごとの詳細、合否発表の時期と方法、公式テキスト・公式講座は、いずれも2026年11月2日時点で公表されていません。受検者数・合格率と過去問は、初回のため存在しません。発表資料には11月中に受検案内を公表すると書かれており、受検料・申込方法・会場ごとの詳細はそこで示されます。2026年11月2日から試験日の1月28日までは87日(約3か月)です。
次の一歩:10問クイック診断で、2本柱のどちらが低いかを今日測る
今日できることは、登録不要の10問クイック診断(約5分)を解いて、実務能力の3科目と倫理・行動規範のどちらが低いかを知ることです。試験日まで87日で、受検案内が11月中に公表されると発表資料に書かれている以上、申込の手続きと学習を並行して始める時期が今だからです。無料会員登録をすると、20問精密診断と60問模試の科目別正答率と弱点が保存され、2本柱ごとの伸びを試験日まで追えます。
「M&A実務能力・倫理検定試験」とは何の試験ですか?
中小企業庁が運営主体となって実施する試験で、正式名称は中小企業M&A実務能力・倫理検定試験です(2026年10月30日 経済産業省・中小企業庁 発表)。名称の「実務能力」はM&A実務・財務・税務・法務の3科目45問程度、「倫理」は倫理・行動規範15問程度に対応します(当サイトの読み方)。初回の試験日は令和9年(2027年)1月28日(木)〜30日(土)のうち任意の1日で、CBT方式・120分・四肢択一、年齢・学歴等に関係なく誰でも受検できます。
「実務能力」と「倫理」は別々の試験ですか?
1つの試験です。「M&A実務能力検定」「M&A倫理検定」という別々の試験はなく、中小企業M&A実務能力・倫理検定試験という1つの試験の中で、4科目・全60問程度が120分で出題されます(発表資料)。倫理・行動規範15問程度だけを受ける区分や、実務能力の3科目だけを受ける区分は、発表資料にありません。
実務能力と倫理、どちらを先に準備すべきですか?
検討会資料の想定(現状案)では、科目別50%が4科目すべてにかかり、禁忌肢は倫理・行動規範だけに設定する方針です。どちらかを捨てる前提が成り立たないため、当サイトは10問クイック診断で低いほうを特定し、そちらから始めることを提案しています(当サイトの学習案)。合格基準は2026年11月2日時点で公表されていません。
倫理の素材は何を読めばよいですか?
検討会第4回資料2が倫理・行動規範の範囲として示しているのは、中小企業庁が2024年8月30日に公表した中小M&Aガイドライン第3版(資料の表記は「中小M&Aガイドライン等」)です。出題科目詳細の項目は使命から支援機関向けの基本姿勢までで、公式テキストは2026年11月2日時点で公表されていません。