この記事の目次(10項目)
  1. 意向表明書と基本合意書は、出題範囲一覧でも別の項目に置かれている
  2. 法務で優先出題項目(●)が付くのは「基本合意に関する法律知識」だけである
  3. M&A実務で●が付くのは「説明・確認」であり、作成や締結ではない
  4. 公表されている契約書サンプルは5本で、意向表明書のサンプルは入っていない
  5. 基本合意書サンプルは全11条で、条名の並びが工程を示している
  6. 第8条「法的拘束力」が、意向表明書と基本合意書の読み分けの中心にある
  7. 第5条「独占的交渉権」と第9条「有効期間」は組み合わせて読む
  8. 第4条「デュー・ディリジェンス」は、基本合意の後に来る工程を指定している
  9. 2026年10月15日時点で公表されていないこと
  10. 次の一歩:基本合意書サンプルの4条を見ずに言えるか確かめる

意向表明書と基本合意書は、出題範囲一覧でも別の項目に置かれている

中小企業庁が検討会第4回資料3として公表した出題範囲一覧には、法務の中項目として「意向表明/基本合意」が置かれています。この中項目の小項目は「意向表明に関する法律知識」と「基本合意に関する法律知識」の2件です。同じ出題範囲一覧のM&A実務には、中項目「基本合意書の作成・確認・締結」が別に置かれています。つまり中小M&A資格試験(仮称)の出題範囲では、意向表明書と基本合意書は1つの塊ではなく、法律知識としての問われ方と、支援者の工程としての問われ方に分かれています。

この分かれ方は、学習の順番をそのまま決めます。法務で問われるのは、文書にどういう法的な効果があるかという知識です。M&A実務で問われるのは、支援者が譲り渡し側と譲り受け側に対して何をする工程かという手順です。同じ「基本合意書」という語を見ても、科目によって答えるべき内容が違います。

法務で優先出題項目(●)が付くのは「基本合意に関する法律知識」だけである

出題範囲一覧の法務の中項目「意向表明/基本合意」では、小項目「基本合意に関する法律知識」に●が付いています。小項目「意向表明に関する法律知識」には●が付いていません。●は出題範囲一覧が優先出題項目として示している印で、2026年10月15日時点で公表されている出題範囲一覧の表記です。

この差は、法務科目の学習配分に直接効きます。意向表明書を軽く扱ってよいという意味ではなく、法務の設問として先に固めるべきなのは基本合意の側だという意味です。中小企業庁は科目別の出題割合として法務17〜18%を現状案として示しており、法務の設問数そのものが多くないため、●が付いた小項目から順に押さえる効果が大きくなります。

M&A実務で●が付くのは「説明・確認」であり、作成や締結ではない

出題範囲一覧のM&A実務の中項目「基本合意書の作成・確認・締結」には、小項目として「基本合意書の作成」「譲り渡し側・譲り受け側への説明・確認」「基本合意の締結」の3件が置かれています。このうち●が付いているのは「譲り渡し側・譲り受け側への説明・確認」だけです。

●の位置は、この試験が支援者に何を求めているかを示しています。書面を作る作業や締結の事務ではなく、当事者に内容を説明し確認を取る行為が優先出題項目に置かれています。中小M&A資格試験(仮称)の受験対象は支援者であり、当事者本人ではありません。基本合意書の条項を暗記するだけでは、●が付いた小項目の設問には届きません。

公表されている契約書サンプルは5本で、意向表明書のサンプルは入っていない

中小企業庁は中小M&Aガイドラインの参考資料7「各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版)」で、契約書サンプルを5本公表しています。5本の内訳は、仲介契約書(M&A仲介業務委託契約書)サンプル、秘密保持契約書サンプル、基本合意書サンプル、株式譲渡契約書サンプル、事業譲渡契約書サンプルです。この5本に意向表明書のサンプルは含まれていません。

意向表明書という語は、同じ参考資料7の仲介契約書サンプルの第6条に「意向表明書の差し入れ」として出てきます。意向表明書そのものの書式は、2026年10月15日時点の参考資料7には公表されていません。意向表明に関する法律知識に●が付いていないことと、意向表明書のサンプルが公表されていないことは、別々の資料に書かれた別々の事実です。学習の実務としては、意向表明書は仲介契約書サンプルの条文側から読む形になります。

基本合意書サンプルは全11条で、条名の並びが工程を示している

参考資料7の基本合意書サンプルは全11条です。条名は第1条(目的)、第2条(承継対象財産及び個人保証解除)、第3条(譲渡価額)、第4条(デュー・ディリジェンス)、第5条(独占的交渉権)、第6条(善良な管理者の注意義務)、第7条(秘密保持義務)、第8条(法的拘束力)、第9条(有効期間)、第10条(準拠法・合意管轄)、第11条(誠実協議)の順に並んでいます。

11条の並びは、基本合意の時点で何が決まっていて何が決まっていないかを示しています。第2条と第3条で承継対象財産と譲渡価額に触れ、第4条でその後に行うデュー・ディリジェンスを置いています。基本合意は、金額や対象を確定させる文書ではなく、確定作業に入る前提を揃える文書として組まれています。

第8条「法的拘束力」が、意向表明書と基本合意書の読み分けの中心にある

基本合意書サンプルには第8条として「法的拘束力」の条が置かれています。法的拘束力の条が独立して置かれているのは、基本合意書の全部が同じ強さで当事者を縛るわけではないという構造を示すためです。法務の小項目「基本合意に関する法律知識」に●が付いている理由は、この構造を読めるかどうかが設問になるためです。

学習上の要点は、どの条が拘束力を持つ側に置かれ、どの条が持たない側に置かれるかを、条名ではなく第8条の書き方から判断することです。譲渡価額の条が並んでいても、第8条の定め方によって当事者の義務の有無は変わります。意向表明書と基本合意書を「どちらが強いか」で覚えると、この判断が逆になります。

第5条「独占的交渉権」と第9条「有効期間」は組み合わせて読む

基本合意書サンプルは、第5条で独占的交渉権を、第9条で有効期間を定めています。独占的交渉権は、譲り渡し側が他の相手と交渉することを制限する定めです。有効期間は、その制限がいつまで続くかを決める定めです。2つの条は、どちらか一方だけを見ると意味が確定しません。

倫理・行動規範の観点でも、この2条は同じ場面を扱います。中小企業庁は科目別の出題割合として倫理・行動規範25%を現状案として示しており、4科目のうち2番目に大きい割合です。独占的交渉権を長く設定することの当事者への影響は、法務の条文知識と倫理・行動規範の行動指針の両方にまたがります。科目をまたぐ論点は、どちらの科目の設問として出ても答えられる状態にしておく必要があります。

第4条「デュー・ディリジェンス」は、基本合意の後に来る工程を指定している

基本合意書サンプルの第4条はデュー・ディリジェンスを定めています。この条があることで、基本合意の締結はデュー・ディリジェンスの前の時点だと確定します。出題範囲一覧でデュー・ディリジェンスが別の中項目として置かれていることと合わせると、基本合意書は工程の順番を確認するための基準点になります。

工程の順番は、M&A実務の設問で問われる形がはっきりしています。中小企業庁は検討会第4回資料2で、M&A実務の出題割合を35〜40%の現状案として示し、サンプル問題として四肢択一を公表しています。基本合意書の前後にどの工程が来るかを言えない状態では、工程の順番を問う設問で選択肢を絞れません。

2026年10月15日時点で公表されていないこと

中小M&A資格試験(仮称)の試験日、受験申込方法、受験料、受験資格は、2026年10月15日時点で公表されていません。試験の正式名称と公式テキストも公表されていません。意向表明書の書式サンプルも、参考資料7には公表されていません。

出題範囲一覧の●の位置、科目別の出題割合、基本合意書サンプルの条の構成は、2026年10月15日時点で公表されている資料から確認できる内容です。出題割合と試験時間は検討会資料が示した現状案で、確定した実施要領として公表されたものではありません。

次の一歩:基本合意書サンプルの4条を見ずに言えるか確かめる

この記事を読んだ直後にできることは1つです。基本合意書サンプル11条のうち、第4条・第5条・第8条・第9条の4つが何を定めているかを、資料を見ずに自分の言葉で言ってみてください。4つとも言えたら法務の●が付いた小項目の土台はあり、どれか詰まったら、詰まった条から読み直す順番が決まります。

この4条を選ぶ理由は記事の中身と対応しています。第8条で拘束力の有無が決まり、第5条と第9条が組み合わせで意味を持ち、第4条が工程の順番を固定するため、基本合意をめぐる設問はこの4条の周りに集まります。言えなかった条があった場合は、無料模試の法務とM&A実務のパートで、契約段階を扱う設問だけを先に解くと、知識の抜けと工程の抜けのどちらで落としているかが切り分けられます。無料登録をすると診断と模試の結果が保存され、次回以降は同じ範囲を解き直したときの差が確認できます。

意向表明書と基本合意書は、どちらが先に作られますか。

仲介契約書サンプルの第6条が「意向表明書の差し入れ」に触れ、基本合意書サンプルの第4条がデュー・ディリジェンスを基本合意の後に置いているため、公表されているサンプルの構成では意向表明書が先、基本合意書が後の順番になります。出題範囲一覧では、法務の中項目名も「意向表明/基本合意」の順で表記されています。

試験では意向表明書は出題されないのですか。

出題範囲一覧の法務には小項目「意向表明に関する法律知識」が置かれているため、範囲内です。2026年10月15日時点の出題範囲一覧で優先出題項目(●)が付いているのは「基本合意に関する法律知識」の側だけで、意向表明の側には付いていません。

基本合意書には法的拘束力がありますか。

中小企業庁が参考資料7で公表している基本合意書サンプルは、第8条として「法的拘束力」の条を独立して置いています。全体に一律の拘束力があるかどうかではなく、どの条に拘束力を持たせるかを第8条の定め方で決める構造です。個別の案件での効力は、その案件の契約書の文面で決まります。

意向表明書の書式サンプルはどこかで入手できますか。

中小企業庁が中小M&Aガイドラインの参考資料7で公表している契約書サンプルは5本で、意向表明書のサンプルは2026年10月15日時点で含まれていません。学習上は、仲介契約書サンプルの第6条にある「意向表明書の差し入れ」という条文の側から読む形になります。

今から何を準備すればいいですか。

基本合意書サンプル11条の条名を順番に言える状態にし、そのうえで契約段階を扱う設問だけを無料模試で解いてください。試験日が2026年10月15日時点で公表されていないため、日数から逆算する計画は立てられませんが、出題範囲一覧の●が付いた小項目は公表済みで、そこから着手する順番は今日決められます。