この記事の目次(6項目)
  1. 実務経験者は主な受験対象——ただし試験の免除は設けない想定
  2. ずれやすい点①:倫理・行動規範は慣行ではなくガイドラインで判定される
  3. ずれやすい点②:禁忌肢は得点とは別に合否へつながる
  4. ずれやすい点③④:法務の独占業務の境界と、専門家連携のための財務・税務
  5. 10分の自己チェック表(当サイト案・○×10項目)
  6. 次の一歩:自己チェックの後、20問精密診断で科目別に測る

実務経験者は主な受験対象——ただし試験の免除は設けない想定

中小企業庁の検討会第4回資料2は、仲介者・FA等のM&A専門業者又はその他の支援機関に所属し、仲介・FA業務に関わる者と、今後仲介・FA業務を行おうとする者を主な受験対象としています。同じ資料2は、立ち上げ期には試験の免除を設けない想定を示しています。検討会第5回資料2(2026年7月21日)は、実務経験に応じた免除等を登録講習について検討するとしていますが、これは合格後の登録講習の話で、案の段階です。

合格基準の現状案は、総得点70〜80%程度、科目別の合格最低基準50%程度、倫理・行動規範の禁忌肢の3層です。1科目でも50%を下回ると不合格になり得る設計のため、得意な工程の知識だけで全体を補うことはできません。本記事は組織としての準備ではなく、個人の実務経験者が自分のずれを点検する手順を扱います。

ずれやすい点①:倫理・行動規範は慣行ではなくガイドラインで判定される

検討会第4回資料2は、倫理・行動規範の科目で、倫理観と行動規範の基本的な考え方から、実務上留意すべき禁止事項・望ましい対応の知識を判定するとしています。出題割合は25%程度(現状案)で、出題の母体は中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月30日公表)です。判定の基準は現場の慣行ではなく、第3版に書かれた規範です。専任条項・テール条項の設定、当事者への説明の範囲とタイミング、他の支援機関への意見聴取の扱いは、慣行と規範がずれやすい領域です。経験に基づく「これで問題になったことはない」という判断は、そのまま誤答になり得ます。

出題範囲と突き合わせると、ずれの場所が具体的になります。検討会資料3が公表している倫理・行動規範の小項目は、使命、仲介者・FAの選定等、基本原則、善管注意義務・職業倫理、広告・営業、品位、法令等の遵守、不適切な個人・組織・反社等との関係、情報管理、その他禁止行為、支援機関向けの基本姿勢です。実務で毎日触れる情報管理より、使命・品位・広告・営業のように日常業務で言葉にしない小項目のほうが、説明できないまま残りやすい部分です(当サイト案)。

ずれやすい点②:禁忌肢は得点とは別に合否へつながる

検討会第4回資料2は、倫理・行動規範に、それを正しいと理解することに大いに問題がある誤答肢として禁忌肢を設定し、禁忌肢を設定した設問を複数設けて一定数の誤答で不合格とする設計を想定しています。禁忌肢の設問数と閾値は2026年10月10日時点で公表されていません。公表サンプルの禁忌肢は、譲り受け側について依頼者に不利益な事実を認識した支援者が、成約を優先して伝えずに進める構図でした。もっともらしい理由が添えられた肢ほど、実務の感覚で選びやすくなります。

ずれやすい点③④:法務の独占業務の境界と、専門家連携のための財務・税務

法務の出題割合は17〜18%程度(現状案)で、弁護士法の独占業務の境界は優先的に出題する項目に挙がっています。士業ごとに要件が違い、弁護士法が禁じる非弁行為は報酬を得る目的を要件とする一方、税理士業務は有償・無償を問わず税理士以外が行えない扱いのため、「無償だから大丈夫」という一律の判断は成り立ちません。日常の業務で専門家に任せている範囲ほど、知識が積み上がりにくい点に注意が必要です。

検討会第4回資料2は、財務・税務と法務の科目で、専門家連携に必要となる基礎知識とリスクに係る知識を判定するとしています。財務・税務の出題割合は20〜23%程度(現状案)で、公表サンプルにはフリー・キャッシュ・フローの計算問題が含まれていました。運転資本の各項目の増減の符号を1つ取り違えると、誤答肢の値にそのまま着地します。M&A実務35〜40%程度(現状案)のうち5%は中小M&A市場・中小企業政策で、自分が関与しない工程とあわせて抜けやすい部分です。

10分の自己チェック表(当サイト案・○×10項目)

次の10項目に、根拠を見ずに○か×を付けてください(当サイト案)。説明できると言い切れない項目は×にします。 1 仲介者とFAの違いを、契約相手・報酬の受け方・利益相反の生じ方・説明義務の4点で言える(M&A実務) 2 自分が関与しない工程(マッチングやPMI)と中小企業政策を、工程表に沿って説明できる(M&A実務) 3 専任条項・テール条項を、条項の有無ではなく期間と範囲の適正さで判断できる(倫理・行動規範) 4 依頼者が他の支援機関にセカンド・オピニオンを求めることを妨げてはならない理由を言える(倫理・行動規範) 5 譲り受け側の懸念情報を認識したら、成約を優先せず依頼者に伝える選択を例外なく選べる(倫理・行動規範) 6 仲介者が双方から手数料を受ける場合に何を開示すべきかを言える(倫理・行動規範) 7 支援者が扱える範囲と、弁護士・税理士等につなぐ範囲を、有償・無償の一点ではなく士業ごとの要件で仕分けられる(法務) 8 株式譲渡・事業譲渡・会社分割で、労働契約の扱いの違いを言える(法務) 9 フリー・キャッシュ・フローの算定で、売上債権・棚卸資産・仕入債務の増減の符号を迷わず言える(財務・税務) 10 バリュエーションの3分類と、それぞれに属する代表的な手法(時価純資産法・類似会社比較法・DCF法など)を言える(財務・税務)

×が付いた項目の科目名を数えると、ずれやすい科目の見当が付きます(当サイト案)。ただし自己チェックは自己申告で、正答率ではありません。×が0個でも、四肢択一で選択肢を切れるかは別に確かめる必要があります。根拠を読み直すときは、倫理・行動規範は中小M&Aガイドライン第3版の原文、他の3科目は当サイトの科目別記事から入ることをおすすめします(当サイト案)。

仲介の実務経験があれば、勉強しなくても受かりますか?

実務経験の有無で合否が決まるという公表はありません。合格基準の現状案には科目別の合格最低基準50%程度と禁忌肢があり、経験が届きにくい科目でも基準を満たす必要があります。まず科目別の現在地を測ることをおすすめします。

実務経験者は何から手をつければよいですか?

当サイトは、自己チェック表で×が付いた項目のうち、倫理・行動規範の項目から根拠を読み直すことをおすすめしています(当サイト案)。禁忌肢は総得点とは別に合否へつながる設計が想定されているためです。

次の一歩:自己チェックの後、20問精密診断で科目別に測る

今日できることは、自己チェック表に○×を付けた後、無料会員向けの20問精密診断(約10分)を受けて、科目別の正答率と自己チェックの×が一致するかを確かめることです。試験日は2026年10月10日時点で公表されておらず、公表前に科目別のずれを数字で把握しておくと、限られた学習時間をどの科目に割くかを早く決められます。無料会員の結果はマイページに保存され、次回の結果と比べて弱点の変化を確認できます。