この記事の目次(11項目)
  1. 計算問題として確認できるのは、公表サンプルの1問だけ
  2. 公表サンプルで与えられている7つの数値
  3. 工程①:営業利益に実効税率をかけ、税引後の営業利益を出す
  4. 工程②:減価償却費10百万円を足し戻す
  5. 工程③:運転資本の増減を差し引く——符号が最も揺れる工程
  6. 工程④:設備投資額20百万円を差し引いて25百万円
  7. 誤答肢3つは、どの工程を落とした値と一致するか
  8. 科目別50%という現状案が、この科目での計算の位置づけを決める
  9. 過去問がない状態で計算を練習する——数値を1か所だけ差し替える
  10. 試験時間のなかで計算問題に何分使えるか
  11. 次の一歩:4工程のうち、自分の手が止まる1か所を特定する

計算問題として確認できるのは、公表サンプルの1問だけ

中小M&A資格試験で計算を伴う問題として確認できるのは、中小企業庁の検討会第4回資料2に掲載されたサンプル問題1問です。この1問は「バリュエーションに関する財務知識(フリー・キャッシュ・フローの計算)」という小項目のもとに置かれています。試験は2026年度に創設予定の段階にあり、初回試験が実施されていないため過去問は存在しません。計算問題の対策は、この公表1問を出発点にする以外の材料がない状態です。

計算問題が本試験で何問出題されるかは、2026年9月7日時点で公表されていません。公表されているのは、財務・税務の出題割合が20〜23%程度、設問数イメージが12〜14問という現状案までです。この12〜14問のうち何問が計算問題かを示す記載は資料2にありません。数を前提にした対策は組み立てられないため、この記事では「公表された1問を工程どおりに処理できる状態」を到達点に置きます。

公表サンプルで与えられている7つの数値

設問で与えられている数値は7つです。営業利益100百万円、減価償却費10百万円、売上債権の増加額15百万円、棚卸資産の増加額8百万円、仕入債務の減少額2百万円、設備投資額20百万円、実効税率40%です。選択肢は25百万円、29百万円、65百万円、75百万円の4つで、正答は25百万円です。

この7つの数値には使う順序があります。順序を守れば、計算そのものは加減乗除だけで終わります。逆に、工程を1つ飛ばすか符号を1つ反転させるだけで、答えは残り3つの選択肢のいずれかに着地します。以下、4つの工程に分けて最後まで解きます。

工程①:営業利益に実効税率をかけ、税引後の営業利益を出す

最初の工程は、営業利益100百万円に(1−0.4)を掛けて60百万円を得ることです。実効税率40%が設問に与えられているのは、この工程のためです。フリー・キャッシュ・フローは税負担を済ませたあとに手元に残る現金を測る指標であり、税を反映しない値は別の意味を持つ数字になります。営業利益をそのまま次の工程へ持ち込むと、この時点で40百万円の差が生まれます。

工程②:減価償却費10百万円を足し戻す

第二の工程は、税引後の営業利益60百万円に減価償却費10百万円を加えて70百万円にすることです。減価償却費は損益計算書で費用として差し引かれていますが、その期に現金の支出を伴いません。現金の増減を測る計算では、費用として引かれた分を戻します。ここを引き算にすると、続く工程を正しく処理しても答えは5百万円になり、選択肢のどこにも一致しません。

工程③:運転資本の増減を差し引く——符号が最も揺れる工程

第三の工程は、運転資本の増減をまとめて差し引くことです。売上債権の増加額15百万円と棚卸資産の増加額8百万円は、現金が資産に姿を変えて滞留した分なので差し引きます。仕入債務の減少額2百万円は、支払いを済ませて現金が出ていった分なので、同じく差し引きます。合計25百万円を70百万円から引いて45百万円です。

この工程で符号が揺れるのは仕入債務です。仕入債務は増えれば支払いを繰り延べた分だけ現金が手元に残り、減れば現金が出ていきます。売上債権や棚卸資産とは現金への効き方が逆であり、そこに「増加額」「減少額」という設問の言葉が重なるため、2段階の反転を処理することになります。設問が与えているのは減少額なので、差し引く方向です。

工程④:設備投資額20百万円を差し引いて25百万円

最後の工程は、45百万円から設備投資額20百万円を差し引いて25百万円を得ることです。設備投資は支出した期の損益計算書に全額が現れませんが、現金は支出の時点で出ていきます。減価償却費を足し戻したうえで設備投資額を差し引くのは、会計上の費用配分を現金の動きに戻す操作であり、工程②と工程④は一対で意味を持ちます。片方だけを行うと、費用配分と現金支出が二重に反映されます。

誤答肢3つは、どの工程を落とした値と一致するか

29百万円は、仕入債務の減少額2百万円を差し引かずに足した場合の値と一致します。70百万円から15百万円と8百万円を引き、2百万円を足し、20百万円を引くと29百万円です。工程③の符号を1か所だけ反転させた結果がこの値になります。

65百万円は、工程①の税効果を反映しなかった場合の値と一致します。営業利益100百万円に減価償却費10百万円を足し、運転資本の増減25百万円と設備投資額20百万円を引くと65百万円です。実効税率40%を使わないまま最後まで進めると、この値に着地します。

75百万円は、税効果を反映せず、さらに運転資本のうち棚卸資産の増加額8百万円と仕入債務の減少額2百万円を差し引かなかった場合の値と一致します。100百万円に10百万円を足し、15百万円と20百万円を引くと75百万円です。3つの誤答肢はいずれも計算ミスの形をしており、自分の出した答えが選択肢の中にあることは、正解であることの根拠になりません。

誤答肢がこの形で並んでいることは、自己採点のやり方を決めます。合っていたかどうかを記録するのではなく、どの工程を落とすとどの値になるかを対応づけて覚えるほうが、同じ型の設問に次に当たったときに効きます。

科目別50%という現状案が、この科目での計算の位置づけを決める

合格基準の現状案は3層です。総得点で70〜80%程度、科目ごとに50%程度、そして倫理・行動規範の重要問題に禁忌肢を設定することが検討されています。財務・税務の設問数イメージは12〜14問なので、科目別50%程度は6〜7問前後に相当します。計算問題を落とすほど、残りの知識問題で埋める必要が生じる構造です。

この科目で計算を工程どおりに処理できる状態にしておくと、同じ学習時間を他の科目へ振り向けられます。財務・税務は、規範の理解で選択肢を絞る他の3科目と違い、手順を持っているかどうかで結果がはっきり分かれる領域です。

過去問がない状態で計算を練習する——数値を1か所だけ差し替える

公表サンプルは1問しかないため、2回目以降は同じ問題を解き直すことになります。同じ数値を繰り返すと答えを記憶してしまい、工程を理解しているのか答えを覚えているのかを区別できません。数値を差し替えて解き直すと、手順で解けているかどうかが分かります。

差し替え方は3通りです。1つ目は実効税率だけを30%や35%に変える方法で、工程①だけを切り出して確かめられます。2つ目は仕入債務を「減少額2百万円」から「増加額2百万円」に変える方法で、工程③の符号だけを試せます。3つ目は減価償却費と設備投資額を同額にする方法で、工程②と工程④が打ち消し合う構造を確認できます。

いずれの場合も、設問文の数値は1か所だけ動かします。2か所以上を同時に変えると、答えがずれたときにどの工程でつまずいたのかを判別できなくなり、練習が採点だけの作業になります。

試験時間のなかで計算問題に何分使えるか

現状案では、設問数は60問程度、試験時間は120分間、CBT方式での実施が想定されています。単純に割ると1問あたり2分です。計算問題は、設問文から7つの数値を読み取り、4工程を順に処理する分だけ、規範を問う設問より手数が多くなります。

事前に測っておくべきなのは、計算に取りかかってから答えを出すまでに自分が何分かかるかです。1問あたり2分という現状案に対して、自分の実測が4分なのか8分なのかで、本番で取る行動は変わります。測っていない状態では、途中で切り上げて先に進む判断ができません。なお、試験で電卓を使用できるかどうかは、2026年9月7日時点で公表されていません。

次の一歩:4工程のうち、自分の手が止まる1か所を特定する

今日できることは1つです。公表サンプルの7つの数値を紙に書き出し、①税引後の営業利益、②減価償却費の足し戻し、③運転資本の増減、④設備投資額の控除という4工程を、それぞれ途中の式の形で書いてから答えを出してください。確かめるのは、答えが25百万円になったかどうかではありません。4つのうちどの工程で手が止まったか、あるいは式を書けなかったかを、1つだけ特定します。

この特定を先にやる理由は、誤答肢の29百万円・65百万円・75百万円がそれぞれ特定の工程の脱落と対応しているため、止まった工程が分かれば、次に補うべき範囲が財務・税務のどの部分かまで絞り込めるからです。手元で1か所を特定したら、当サイトの無料模試で財務・税務の設問に通しで当たり、同じ工程で止まるかどうかを確かめてください。無料登録をすると診断・模試の結果が保存され、次に解いたときの結果と並べて比べられます。

中小M&A資格試験に計算問題は出ますか。

出題が確認できる計算問題は、中小企業庁の検討会第4回資料2に掲載されたフリー・キャッシュ・フローの算定1問です(2026年9月7日時点)。本試験で何問出題されるかは公表されていません。財務・税務全体の設問数イメージとして12〜14問という現状案が示されています。

公表サンプルの計算問題の正答はいくらですか。

25百万円です。営業利益100百万円に実効税率40%を適用した60百万円に、減価償却費10百万円を足し、売上債権の増加額15百万円・棚卸資産の増加額8百万円・仕入債務の減少額2百万円の合計25百万円と、設備投資額20百万円を差し引いて求めます。

試験で電卓は使えますか。

電卓の使用可否は、2026年9月7日時点で公表されていません。公表されているのは、CBT方式・120分間・60問程度という現状案までです。使用可否が公表された時点で、この記事と試験情報のページを更新します。

今から計算問題の対策として何を準備すればいいですか。

公表サンプル1問を4工程に分解して解き、数値を1か所だけ変えて解き直すことから始めます。実効税率だけを変える、仕入債務の増減を反転させる、減価償却費と設備投資額を同額にする、の3通りが、工程を1つずつ切り出して確かめる形です。試験日が未公表のため、期間を区切った計画ではなく、工程ごとの到達度で進み具合を管理します。