この記事の目次(10項目)
  1. 公表されている禁忌肢の問題は、参考の1問だけ
  2. 場面——譲り渡し側の社長が「本当に大丈夫か」と聞いている
  3. 正答①が求めているのは「報告する」と「契約締結前に説明する」の2つ
  4. 禁忌肢②の核心は、知っていた情報を依頼者に渡さなかったこと
  5. 資料が挙げた抵触先は、反社対応ではなく利益相反の節
  6. ③と④は正答でも禁忌肢でもない——「足りていない」型の誤答
  7. この1問を演習に作り替える——不利情報を入れ替えて同じ判断を繰り返す
  8. 資料に③・④の解説はない——書かれていないことは書かない
  9. この1問から持ち帰る判断軸は「足りていない」か「止めた」かの1本
  10. 次の一歩:自分の解答を「不足型」と「遮断型」に仕分ける

公表されている禁忌肢の問題は、参考の1問だけ

中小企業庁の検討会第4回資料2は、8ページに「(参考)禁忌肢に関するサンプル問題」として1問を掲載しています。この1問は、正式なサンプル問題4問(M&A実務・財務・税務・法務・倫理・行動規範の各1問)とは別枠で、参考として示されたものです。形式は正式4問と同じ四肢択一です。禁忌肢が具体的な選択肢の文言として公表されているのは、2026年9月14日時点でこの1問だけです。本試験で何肢が禁忌肢に設定されるかは、同日時点で公表されていません。

場面——譲り渡し側の社長が「本当に大丈夫か」と聞いている

設問の場面は、後継者不在で第三者承継を検討する譲り渡し側(A社社長)と、その仲介業者である受験者です。譲り受け側の候補(B社)は「買収後すぐに資金を投入して事業を拡大する」「経営者保証も引き継ぐ方向で検討する」といった前向きな発言をしています。一方で仲介業者の側は、社内で過去にB社と同種の買い手によるトラブル事例を見聞きしています。A社社長は「本当に大丈夫か」「最終契約・クロージング後に揉めないか」という不安を口にしています。問われているのは知識の有無ではなく、この場面で支援者が次に何をするかです。

正答①が求めているのは「報告する」と「契約締結前に説明する」の2つ

正答は①です。①の内容は、譲り受け側(B社)の調査結果をA社へ報告することと、最終契約締結前に、契約締結後・クロージング後にトラブルとなり得るリスクを説明することの2つです。行為が2つ書かれている点がこの肢の要です。調査結果を持っていることと、それを依頼者に渡すことは別の行為だからです。加えて、説明の時点が「最終契約締結前」と限定されています。締結後に同じ説明をしても、依頼者は判断をやり直せません。「最終契約締結前」という時点指定は、譲り渡し側が候補を降りる選択肢をまだ持っている段階を指しています。中小M&Aの工程では、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングの順に進むにつれて、依頼者が引き返すための費用と時間が増えます。①は、判断の材料を、判断がまだできる段階で渡すことを求めている肢です。

禁忌肢②の核心は、知っていた情報を依頼者に渡さなかったこと

禁忌肢は②です。②の内容は、譲り受け側(B社)の社長と反社会組織との交友関係を確認していながら、成約や手続進行を優先するため、A社社長には説明せずに取引を進める、というものです。この肢の支援者は、情報を持っていないのではなく、持っていて渡していません。①と②は、支援者が同じ情報を握っている点で共通しています。分かれ目は、依頼者に渡したかどうかの1点だけです。

資料が挙げた抵触先は、反社対応ではなく利益相反の節

検討会第4回資料2は、②を禁忌肢に設定した理由を「中小M&Aガイドラインに明らかに抵触する内容」と注記しています。注記が抵触先として挙げているのは、中小M&Aガイドライン第2章Ⅱ.5「仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」です。反社会的勢力への対応を定めた箇所ではありません。②が利益相反の問題として整理されているのは、支援者が自分の成約という利益を優先し、依頼者が判断するための材料を止めた構造があるからです。反社会的勢力との交友関係は、その構造を最も分かりやすく示す素材として置かれています。この注記に沿って読むと、禁忌肢の対策範囲は反社対応の暗記ではなく、依頼者の判断材料を止める行為全般に広がります。

③と④は正答でも禁忌肢でもない——「足りていない」型の誤答

③の内容は、譲り受け側の適格性についてB社からの提供情報や会社案内資料を踏まえて判断すれば足りるとして、更なる追加調査・検証までは行わない、というものです。④の内容は、依頼者への説明を仲介手数料の算定方法や金額を中心に行い、M&Aプロセスごとの業務内容や想定されるリスク事項についての詳細説明までは行わない、というものです。③は調査が足りず、④は説明の範囲が足りません。②との違いは情報の位置にあります。③と④の支援者は、まだ依頼者に渡すべき情報を手にしていません。

この1問を演習に作り替える——不利情報を入れ替えて同じ判断を繰り返す

この1問は、素材を入れ替えれば何度でも演習に使えます。②で伏せられた情報は反社会的勢力との交友関係ですが、分かれ目になっているのは情報の種類ではなく、依頼者に渡したかどうかです。そこで、伏せる情報を簿外債務の存在、譲り受け側が抱える係争、キーマンの退職意向、資金計画の裏づけの薄さなどに置き換え、同じ4肢の構造で自分に問い直します。置き換えても正答の条件は変わらず、調査結果を依頼者へ報告し、最終契約締結前にリスクを説明する肢が残ります。中小M&A資格に過去問は存在しないため、公表された1問を素材として増やす作業は、演習量を確保する現実的な手段になります。

資料に③・④の解説はない——書かれていないことは書かない

検討会第4回資料2には、③と④が正答でも禁忌肢でもない理由の解説は記載されていません。同資料から読み取れるのは、①が正答であること、②が禁忌肢であること、②の抵触先として第2章Ⅱ.5が挙げられていることの3点です。③と④を「軽い違反だから減点にとどまる」と読むことも、「本試験なら禁忌肢になり得る」と読むことも、公表資料からは導けません。当サイトはここを推測で埋めません。学習する側でも、③と④の扱いを前提にした対策は立てないでください。

この1問から持ち帰る判断軸は「足りていない」か「止めた」かの1本

4つの肢は、支援者の情報の持ち方で3つに分かれます。③と④は、必要な調査や説明にまだ到達していない「不足型」です。②は、到達したうえで依頼者に渡さなかった「遮断型」です。①は、到達し、かつ渡した肢です。倫理・行動規範の設問を解くとき、自分が選んだ肢がこの3つのどこにいるかを言えるようにしておくと、知識を足す対策と判断を変える対策を切り分けられます。倫理・行動規範は出題割合25%(現状案)で、4科目のうち禁忌肢が設定される唯一の科目です。

次の一歩:自分の解答を「不足型」と「遮断型」に仕分ける

今日できることは1つです。無料模試の倫理・行動規範の設問を解いたあと、自分が選んだ肢のそれぞれについて、「調査や説明がまだ足りていない肢」なのか「情報を持っていて依頼者に渡していない肢」なのかを書き分けてください。正誤の記録ではなく、2種類のどちらだったかの記録です。

この仕分けに意味があるのは、公表された1問が正答と禁忌肢を分けた条件が、情報を持っていたかどうかではなく、依頼者に渡したかどうかだったからです。不足型の取りこぼしは知識を足せば減りますが、遮断型を選ぶ傾向は同じ判断軸を何度か使わないと変わりません。無料登録をしておくと診断や模試の結果が保存され、次に解いたときに遮断型を選んだ設問が減っているかを、同じ条件で前回と比べられます。

禁忌肢のサンプル問題は何問公表されていますか

参考として示された1問です。中小企業庁の検討会第4回資料2の8ページに掲載されています。正式なサンプル問題4問とは別枠の扱いで、形式は同じ四肢択一です。

正答と禁忌肢はどの選択肢ですか

正答は①、禁忌肢は②です。①は譲り受け側の調査結果の報告と最終契約締結前のリスク説明を内容とし、②は反社会的勢力との交友関係を確認しながら依頼者に説明せず取引を進める内容です。

③と④も禁忌肢になりますか

検討会第4回資料2では、③と④は正答でも禁忌肢でもない肢として置かれています。③と④の扱いについての解説は同資料に記載されていません。本試験で何が禁忌肢に設定されるかは、2026年9月14日時点で公表されていません。

今から何を準備すればいいですか

倫理・行動規範の設問を解いたあと、自分の解答を「不足型」と「遮断型」に仕分ける作業から始めてください。公表された1問が正答と禁忌肢を分けた条件は、情報を持っていたかどうかではなく依頼者に渡したかどうかでした。無料の模試で同じ仕分けを続けると、判断の癖が設問をまたいで見えます。