この記事の目次(11項目)
商工団体・支援機関の職員は、この試験のどこに位置づけられているか
商工団体や公的支援機関で中小M&Aに携わる職員は、中小M&A資格試験(仮称)の「主な受験対象」ではなく、「受験を広く推奨する」対象として一次資料に書かれています。中小企業庁が中小M&A市場の改革に向けた検討会(第4回)に提出した資料2は、主な受験対象を「仲介者・FA等のM&A専門業者又はその他の支援機関(金融機関、士業等専門家、M&Aプラットフォーム等)に所属する仲介・FA業務に関わる者及び今後中小M&Aの仲介・FA業務を行おうとする者」と記載しています。商工団体はこの一文には含まれていません。資料2は続けて「また、商工団体や事業会社において中小M&Aに携わる者等についても、受験を広く推奨する」と記載しています。いずれも現状案です。
この2文の差は、受験を急ぐかどうかの判断材料になります。主な受験対象は「仲介・FA業務に関わる者」という業務の内容で定義されており、所属先が民間か公的かでは定義されていません。商工団体は、同じ資料の中で一文を分けて置かれています。
所属先ではなく、担当業務が位置づけを決める
主な受験対象の文言は、支援機関を「金融機関、士業等専門家、M&Aプラットフォーム等」として例示しています。この例示に商工団体は入っていません。一方で、商工団体の職員が仲介・FA業務そのものを担当する場合に主な受験対象から外れるという記載も、資料2にはありません。資料から読み取れるのは、区分の軸が組織の種類ではなく仲介・FA業務への関与であるという点までです。受験資格の線引きそのものは、2026年9月15日時点で公表されていません。
出題範囲一覧には、支援機関職員の職場そのものが項目として並ぶ
出題範囲一覧(検討会第4回 資料3)の大分類「中小企業政策」には、「公的団体における取組み」という項目があります。その下に並ぶのは、事業承継・引継ぎ支援センター、中小企業活性化協議会、よろず支援拠点(中小機構)、事業承継ネットワークの4つです。公的支援機関の職員にとっては、自分の所属組織または日常の連携先の名称が、そのまま出題項目の名前になっています。資料3の冒頭には「試験科目一覧に関しては、あくまで来年度以降の試験実施に向けた現状案であり、今後、試験実施に係る試験案内等で公表する際には変更が生じうる点に留意。」という注記が付されています。
資料3には出題割合の数値が記載されていません。割合が示されているのは資料2の側で、M&A実務35〜40%、倫理・行動規範25%、財務・税務20〜23%、法務17〜18%が現状案です。「公的団体における取組み」が何問になるかは、2026年9月15日時点の公表資料からは特定できません。
支援機関の職員にとって、この項目そのものは既知の領域です。自分の組織の役割、連携先との役割分担、相談の受け渡しの流れは、日々の業務で経営者に説明している内容だからです。ただし資料2が出題割合を示しているのは4科目の単位で、中小企業政策がそのどこに対応するかは公表資料からは特定できません。既知の項目がどれだけ得点に寄与するかを、現時点の資料から見積もることはできません。
日常業務と重なるのは、相談の受付とニーズの掘り起こしまで
資料2は、事業承継・引継ぎ支援センターについて「全国47都道府県に設置した事業承継・引継ぎ支援センターでは、親族内・従業員・第三者の別を問わず、事業承継・M&Aに関する支援ニーズの掘り起こしからニーズに応じた支援までワンストップで実施。」と記載しています。相談の入口に立ち、案件になる前の段階で経営者と向き合うことが、支援機関の職員の持ち場です。この工程は、出題範囲のM&A実務のうち事前相談にあたる部分と重なります。
重なる範囲はそこで止まります。試験は事前相談からPMIまでの工程を通して問う構成で、M&A実務の出題割合は35〜40%(現状案)です。相談の受付とマッチングの手前までが日常業務である職員にとって、既知の領域はその35〜40%の一部にとどまります。
相談から先の工程が、得点の分かれ目になる
支援機関の職員が日常業務で手を動かさない工程は、企業概要書の作成、意向表明、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、PMIです。これらはいずれもM&A実務の出題対象です。案件を仲介者やFAに引き継いだ後に何が起きるかを、工程の順序と各工程で交わす書面の役割まで説明できるかどうかが、この科目の得点を決めます。
財務・税務20〜23%(現状案)も同じ位置にあります。公表されたサンプル問題のうち1問はフリー・キャッシュ・フローの算定を求める計算問題で、相談対応の経験では代替できません。
公表されたサンプル問題は、相談受付より後の判断を題材にしている
中小企業庁が公表しているサンプル問題は、正式な4問(M&A実務・財務・税務・法務・倫理・行動規範の各1問)と、参考として示された禁忌肢のサンプル問題1問です。いずれも四肢択一です。4問が題材にしているのは、スキームの選択を比較して判断すること、フリー・キャッシュ・フローを算定すること、契約条項の効力を判断すること、独占業務の境界を判定することです。
この5問はいずれも、相談の受付より後の工程で下す判断を題材にしています。支援機関の職員が日常業務で最も多く扱う「相談を受けて整理し、適切な支援先につなぐ」場面を単独で問う設問は、公表されたサンプルの中にはありません。試験形式の現状案は、設問60問程度・試験時間120分・CBT方式です。
法務17〜18%——書面が工程のどこで何を確定させるか
法務の出題割合は17〜18%(現状案)で、4科目のうち最も小さい科目です。ただし科目別の最低基準50%程度は、最も小さいこの科目にも同じようにかかります。支援機関の職員が経営者から契約書について質問を受ける場面は日常的にありますが、試験が問うのは、秘密保持契約・基本合意・最終契約といった書面が工程のどこで何を確定させるかという知識です。相談の現場で使う説明の言葉と、書面の役割を工程順に並べる知識は、別に準備する必要があります。
倫理・行動規範25%——紹介する側にも行動指針が及ぶ
倫理・行動規範は出題割合25%(現状案)で、4科目のうち2番目に大きい科目です。この科目の母体は中小M&Aガイドラインの行動指針です。支援機関の職員が民間の仲介者やFAを経営者に紹介する場面では、特定の事業者に偏らない紹介、手数料体系の説明、利益相反の認識といった論点が、そのまま行動規範の問題になります。
倫理・行動規範は、禁忌肢が設定される唯一の科目です。禁忌肢は、選ぶと総得点にかかわらず合否に直接影響する選択肢で、合格基準の3層目に当たります(現状案)。
科目別50%の基準が、紹介が中心の職員に効く理由
合格基準の現状案は3層です。総得点70〜80%程度、科目別の最低基準50%程度、そして倫理・行動規範の禁忌肢の3つです。科目別の最低基準があるため、中小企業政策や相談対応で得点できても、財務・税務や法務が50%を割れば合格になりません。
得点が偏る科目は、職員一人ひとりの経歴によって変わります。科目別の最低基準が置かれている以上、先に確かめるべきは得意な科目ではなく、一度も業務で扱っていない工程と科目です。
受験資格・受験料・試験日は2026年9月15日時点で公表されていない
受験資格、受験料、受験申込方法、試験日は、2026年9月15日時点で公表されていません。試験の正式名称と公式テキストも公表されていません。公表されているのは、中小企業庁が2026年5月1日に試験実施事業の委託先として株式会社銀行研修社の採択を公表したところまでです。商工団体や公的支援機関の職員について、受験資格や費用の取り扱いが別に定められるかどうかも、公表されていません。
次の一歩:相談受付より先の工程だけを測る
今日できることは1つです。無料の実力診断を受けたうえで、日常業務で扱っている相談受付とマッチングまでの設問ではなく、その先の工程——企業概要書、意向表明、デューデリジェンス、最終契約、PMI——に関する設問だけを抜き出し、正答が半分に届いているかを確かめてください。
この確かめ方に意味があるのは、合格基準に科目別の最低基準50%程度が置かれているためです(現状案)。相談の入口に強い職員ほど、M&A実務の得点が前半の工程に寄り、後半の工程で50%を割っているかどうかが本人からは見えません。無料登録をすると診断と模試の結果が保存され、同じ工程を測り直したときの比較対象になります。
商工会議所や商工会の職員も中小M&A資格試験を受けられますか。
受験資格は2026年9月15日時点で公表されていません。中小企業庁の検討会第4回資料2は、商工団体において中小M&Aに携わる者等について「受験を広く推奨する」と記載しています(現状案)。主な受験対象として定義されているのは、仲介・FA業務に関わる者と今後その業務を行おうとする者です。
支援機関の職員にとって、この資格は業務の要件になりますか。
要件化の決定は2026年9月15日時点で公表されていません。中小企業庁は資格の登録制度を検討会で議論していますが、公的支援機関の職員の業務要件との接続について公表された決定はありません。
事業承継・引継ぎ支援センターの業務は出題されますか。
出題範囲一覧の大分類「中小企業政策」に「公的団体における取組み」という項目があり、その下に事業承継・引継ぎ支援センター、中小企業活性化協議会、よろず支援拠点(中小機構)、事業承継ネットワークが並んでいます(現状案)。ただし資料3に出題割合の数値はなく、何問出るかは公表されていません。
今から何を準備すればいいですか。
相談受付より先の工程が何問正答できるかを先に測ることです。企業概要書から最終契約とPMIまでの工程を対象に無料の実力診断を受け、正答が半分に届かない工程を1つ特定してから教材を選ぶと、科目別の最低基準50%程度(現状案)への対応を最短で始められます。