M&A仲介の資格は義務化されるのか——2026年9月2日時点の答え

M&A仲介・FA業務を行うために中小M&A資格の保有を要件とする決定は、2026年9月2日時点で公表されていません。中小企業庁の公表資料のうち資格と業務の関係に触れているのは2026年3月17日の検討会第4回資料2で、そこに書かれているのは試験制度と合格者登録制度の設計、実施スケジュールの想定、そしてガイドラインへの反映の「検討」までです。「資格がなければM&A仲介ができなくなる」「2026年から資格が必須になる」という内容は、いずれも公表資料に記載がありません。義務化について読むときは、確定していることと検討段階にとどまっていることを分けて読む必要があります。本記事は義務化の可否と時期に絞って、公表資料に書かれている範囲を整理します。事業者登録と個人登録の制度構造は、M&A支援機関登録制度との関係を扱った記事で説明しています。

公表されているのは何か——合格→登録講習→氏名公表→定期講習の接続設計

中小企業庁の検討会第4回資料2は、試験制度と合格者登録制度を一体で運用する設計を公表しています。合格者の登録要件として示されているのは、倫理規程の遵守、倫理規程に違反した場合の処分(氏名公表等)への同意、登録時の講習および定期的な講習(1〜2年ごと等を想定)の受講の3点です。登録した合格者は、データベースにおいて倫理規程を遵守する資格保有者として氏名が公表され、資格証の交付を受ける設計です。これらはすべて現状案です。資料2に書かれているのは合格した個人が登録する仕組みであり、登録していない人がM&A支援業務を行えなくなるという記述は資料にありません。接続設計が公表されていることと、業務の要件化が決まっていることは、別の事柄です。

「検討」と書かれていること——登録機関への資格取得の推奨と重要事項説明

資料2は、資格と業務の接点として次の一文を置いています。「中小M&Aガイドラインにおいて、『M&A支援機関登録制度』の登録機関に対して、自社の担当者への当該資格取得の推奨や重要事項説明を当該資格保持者が行うことを求めるなど、資格の浸透を通じた市場の健全化を図ることを検討。」この文の主体は中小企業庁で、述語は「検討」です。決定ではありません。検討の対象として挙がっているのも「資格取得の推奨」と「重要事項説明を資格保持者が行うことを求める」であり、M&A仲介・FA業務全体の要件化ではありません。同じ資料2には委員の意見として「資格取得のインセンティブとしても、重要事項説明を資格保有者が行うことを奨励もしくは必須とする旨を、中小M&Aガイドライン上に明記すべきではないか」という発言が記録されています。委員意見は中小企業庁の決定ではありません。要件化するかどうか、するとして重要事項説明に限るのか業務全体か、は2026年9月2日時点で公表されていません。

現行のM&A支援機関登録制度との関係——3,399件の登録に個人の資格要件はない

現行のM&A支援機関登録制度は、中小M&Aガイドラインの遵守の宣言等を登録要件とする事業者単位の制度で、担当者個人が資格を保有していることを登録要件にしていません。登録FA・仲介業者は令和8年3月9日時点で3,399件(法人2,606件、個人事業主793件)です。中小企業庁はガイドラインのページで、登録を希望する支援機関に中小M&Aガイドラインの遵守宣言を求めること、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)で登録支援機関の活用を要件とすること等により、行動指針の普及・定着を図ってきたと説明しています。国が支援機関に働きかけてきた手段は、業務の禁止ではなく、宣言と補助金の対象範囲でした。中小M&A資格の合格がこの登録制度の登録要件に加わるかどうかは、2026年9月2日時点で公表されていません。既に登録している事業者の扱いも公表されていません。

弁護士法の独占業務との違い——試験合格は業務を独占する資格ではない

中小M&A資格の合格者にM&A仲介・FA業務を独占させる規定は、2026年9月2日時点の公表資料に記載がありません。資料2が資格の目的として書いているのは、中小企業のM&A支援を行う個人の知識・スキル、倫理観を向上させることです。一方、弁護士法は法律事務を弁護士の独占業務としており、中小M&A資格試験の法務科目では弁護士法の独占業務の境界が優先的に出題する項目に置かれ、公表サンプル問題4問のうち1問がこの境界判定の型でした。公表資料から読める構造は、「資格がないとM&A支援ができない」ではなく、「資格の有無にかかわらず、弁護士法などが定める業務範囲の線は越えられない」です。中小M&A資格が新たな独占業務を生むのではなく、既存の独占業務の境界を理解しているかを試験で確認する設計になっています。義務化の議論と独占業務の議論は、この点で別の話です。

いつから?——令和8・9年度に試験、令和10年度以降に登録運用

資料2がスケジュールとして公表しているのは、令和7年度に資格制度WGで試験制度を検討し資格制度概要を公表、令和8・9年度に民間の資格試験実施団体への委託により中小M&A資格試験を実施、令和10年度以降に合格者登録・管理制度の運用を開始し、適切な試験実施のあり方は継続検討、という想定です。試験実施の委託先は株式会社銀行研修社で、中小企業庁が2026年5月1日に採択を公表しました。立ち上げ期は年3回程度の受験機会を設けた一斉実施が想定されています。この時系列に「義務化の開始時期」は含まれていません。試験日・受験料・申込方法・受験資格も2026年9月2日時点で公表されていません。「いつから義務化されるのか」に対する正確な答えは、時期は決まっておらず、決まっているのは合格者登録・管理制度の運用開始が令和10年度以降に想定されていることまで、です。

義務化を待つ必要はあるか——決定前に確定している事実だけで判断できること

義務化の決定を待たずに判断できるのは、受験の準備を始めるかどうかです。判断材料は3つあります。第1に、資料2は登録機関に資格取得の推奨等を求めることを検討すると明記しており、検討の方向は資格の浸透です。第2に、合格者登録制度は氏名をデータベースで公表する設計で、依頼者や金融機関が担当者単位で支援者を確認できる情報が増える方向にあります。第3に、登録制度の運用開始想定より前の令和8・9年度に受験機会が置かれており、要件化の有無にかかわらず先に合格しておく時間的余地が制度上あります。他方で、義務化されると断定する情報を根拠に受験を急がせる説明には、公表資料の裏づけがありません。2026年9月2日時点で公表されている事実は本記事に書いた範囲がすべてです。当サイトは要件化に関する公表を確認し次第、公表状況のページと本記事を更新します。

M&A仲介の資格は義務化されますか?

義務化の決定は2026年9月2日時点で公表されていません。中小企業庁の検討会第4回資料2に書かれているのは、M&A支援機関登録制度の登録機関に資格取得の推奨等を求めることを検討する、という段階までです。

義務化されるとしたらいつからですか?

時期は公表されていません。公表されている時系列は、令和8・9年度に試験を実施し、令和10年度以降に合格者登録・管理制度の運用を開始する想定です。義務化の開始時期はこの時系列に含まれていません。

資格がないとM&A支援機関に登録できなくなりますか?

2026年9月2日時点で公表されていません。現行の登録要件は中小M&Aガイドラインの遵守の宣言等で、担当者個人の資格保有は要件に含まれていません。

資格を持たない人がM&A仲介をすると違法になりますか?

中小M&A資格の合格者に業務を独占させる規定は、2026年9月2日時点の公表資料にありません。ただし弁護士法が定める法律事務の独占など、資格の有無にかかわらず越えられない業務範囲の線は既に存在し、試験の法務科目でその境界が優先的に出題されます。

義務化が決まる前に、今から何を準備すればいいですか?

4科目のうち自分が科目別最低基準50%程度(現状案)を下回る科目を把握することです。当サイトの無料の実力診断で現在地を測り、試験案内が公表されたら試験日から逆算して学習計画を組んでください。

次の一歩:義務化の決定を待たずに、4科目の現在地を測る

今日できる行動は、当サイトの無料の実力診断を受けて、M&A実務・倫理・行動規範・財務・税務・法務の4科目のうち、どこが科目別最低基準50%程度(現状案)を下回るかを把握することです。義務化の可否は未公表でも、令和8・9年度に受験機会が置かれ、令和10年度以降に氏名公表を伴う登録運用が想定されている以上、弱点科目を早く知るほど準備期間を長く取れます。無料登録すると診断・模試の結果がマイページに保存され、次回以降の学習に使えます。