この記事の目次(9項目)
  1. 試験日が未公表でも計画は立てられる——期間ではなく比率で持つ
  2. 3か月モデルの全体像——1:5:4:2の4ブロック
  3. 第1週:診断と重点科目の決定——この週で決める4つ
  4. 第2〜6週:重点科目を原文で精読し、その日のうちに演習する
  5. 第7〜10週:全科目の演習と弱点復習に切り替える
  6. 第11〜12週:本番形式模試2回と直前総復習
  7. 試験日が公表されたら、どう差し替えるか
  8. 週あたりの学習時間が確保できないときの圧縮のしかた
  9. 計画が崩れたときの立て直し方

試験日が未公表でも計画は立てられる——期間ではなく比率で持つ

学習計画は通常、試験日から逆算して作ります。中小M&A資格試験ではこの前提が成立しません。試験日・受験料・申込方法・受験資格は、いずれも2026年8月31日時点で公表されていないからです。検討会資料では令和8・9年度の実施が想定され、立ち上げ期は年3回程度の一斉実施が想定されていると示されていますが、具体的な日程は出ていません。つまり「試験まであと何週間」という分母が存在しない状態です。この状態で作れる計画は1種類しかありません。期間を固定せず、各段階に割く時間の比率だけを決めておき、日程が公表された瞬間にその比率で週数を配分し直す形です。

比率で持つ設計には、待つよりも先に進むという実利があります。日程の発表を待って学習を始めると、発表から試験日までの期間がどれだけ短くても、その期間内にすべてを収める計画しか作れません。先に比率で組んだ計画を回しておけば、発表時点で残っている作業だけを配分し直せばよく、すでに終えたブロックはそのまま資産になります。また、比率で持つ計画は途中で崩れても復旧が容易です。遅れた週を取り戻そうとするのではなく、現在どのブロックにいるかだけを確認して、残りを配分し直せば済むためです。本記事は3か月=12週を基準単位として、4つのブロックの中身を具体化します。学習の順番そのものの理由づけは勉強方法の記事、必要な総時間の見積もりは勉強時間の記事で扱っています。

3か月モデルの全体像——1:5:4:2の4ブロック

3か月モデルは、12週を1:5:4:2に配分します。第1週は診断と重点科目の決定、第2〜6週の5週は重点科目の優先出題項目を原文で精読しながら演習、第7〜10週の4週は全科目の演習と弱点復習、第11〜12週の2週は本番形式の模試2回と直前総復習です。この比率になる理由は、合格基準の現状案が総得点70〜80%程度に加えて科目別最低基準50%程度と倫理科目の禁忌肢という3層構造だからです。基準を割っている科目の立て直しに最大の枠(5週)を置き、全科目の維持に4週、時間配分と持久力の確認に2週を割り当てると、3つの条件をそれぞれに対応させられます。全科目を毎週均等に回す計画にすると、この対応関係が崩れます。

第1週:診断と重点科目の決定——この週で決める4つ

第1週は学習ではなく、計画の変数を確定させる週です。決めるのは4つあります。第一に、重点科目。20問程度の科目横断の演習でM&A実務・倫理・行動規範・財務・税務・法務の科目別正答率を出し、50%を下回った科目を名指しします。第二に、着手する項目のリスト。中小企業庁が公表した小項目一覧のうち、特に重要度が高く優先的に出題する項目(●印)から、重点科目に含まれるものだけを抜き出し、既習と未習に仕分けます。ここでの既習は「名前を知っている」ではなく「事例形式の設問に答えられる」で判定します。第三に、1週間に確保できる学習時間。平日と週末に分けて実数で出します。第四に、模試2回の実施日を先にカレンダーへ置くことです。

4つ目の「模試の日を先に置く」は、順序として重要です。模試を「余裕があれば受けるもの」として最後に回すと、範囲の学習が押した分だけ削られ、時間配分と終盤の集中力を測らないまま本番を迎えることになります。日付を先に固定しておけば、そこから逆算して各週の進度が決まります。なお第1週に原文を読み始める必要はありません。重点科目が確定していない状態で読み始めると、すでに50%を超えている科目に時間を注ぐことになるためです。第1週の作業は合計で1時間程度に収まります。

第2〜6週:重点科目を原文で精読し、その日のうちに演習する

第2〜6週の5週間は、重点科目の未習●項目を消化する期間です。まず、第1週で数えた未習項目数を5で割り、1週あたりの項目数を出します。未習が20項目なら週4項目、40項目なら週8項目です。週の型は、平日に原文を読み、読んだその日のうちに同じ論点の演習を数問解く形にします。読了から演習までの間隔が空くほど、理解した感覚と適用できる状態の差が埋まらなくなるためです。週末は、その週に読んだ項目の演習をまとめて解き直す時間に充てます。この5週間は重点科目に集中し、他科目は触りません。

重点科目が何かによって、この5週間の中身は変わります。倫理・行動規範が重点科目なら、中小M&Aガイドライン第3版の原文を読む比重が最も大きくなります。この科目で問われるのは「〜してはならない」という規範の文言そのものであり、要約に置き換えると原文の一部を差し替えた選択肢を見分けられなくなるためです。財務・税務が重点科目なら、読む時間より手を動かす時間を長く取ります。4科目のうち公表サンプルで計算問題が示された科目で、途中式を最後まで書かないと符号や税率の内訳の取り違えに気づけません。法務が重点科目なら、会社法の株式譲渡の承認手続や事業譲渡の株主総会決議、弁護士法の独占業務の境界に範囲を絞ります。M&A実務が重点科目なら、事前相談から仲介契約・FA契約、重要事項説明、スキーム、バリュエーション、マッチング、DD、最終契約、クロージング、PMIという工程の順に読み進めると、項目どうしの位置関係が保てます。

5週のうち3週目が終わった時点で、一度だけ進度を確認します。確認するのは消化した項目数ではなく、重点科目の正答率が上がっているかどうかです。同じ科目を20問程度解き直し、50%を超えていれば残り2週の割り付けはそのままで問題ありません。項目は消化しているのに正答率が動いていない場合、原因は読む一方で演習していないことにあることが多く、その場合は残り2週の配分を演習側へ寄せます。

第7〜10週:全科目の演習と弱点復習に切り替える

第7〜10週の4週間は、重点科目を離れて4科目全体を回す期間です。この期間の目的は2つあります。1つは、第2〜6週に触れなかった科目の正答率が落ちていないかの確認。50%を超えていた科目も、5週間放置すれば下がります。もう1つは、間違えた問題の回収です。第2〜6週で誤答となった設問を、翌日・3日後・1週間後という間隔で解き直してきたはずなので、この期間はその最終確認にあたります。週の型は、前半に全科目の演習、後半に誤答の解き直しと該当箇所の読み直しという配分にします。

この4週間で意識して扱いたいのが、科目をまたぐ論点です。最終契約における表明保証・補償・解除・クロージング前提条件は、法務とM&A実務の両方から問われうる横断領域にあたります。仲介とFAの違い、不適切な譲り受け側の排除、利益相反の管理といった論点も、M&A実務と倫理・行動規範のどちらの科目からでも出題されうる位置にあります。科目別に学習していると、こうした論点は「どちらの科目で覚えたか」で記憶が分断され、別の科目の文脈で問われたときに引き出せません。全科目を横断して演習するこの期間は、その分断を解消するのに適しています。また、この4週間で誤答が特定の科目に偏り始めた場合は、第1週と同じ手順で重点科目を選び直します。

第11〜12週:本番形式模試2回と直前総復習

第11〜12週の2週間は、知識を増やす期間ではなく、本番の条件で通す期間です。設問60問程度・試験時間120分・CBT方式という試験形式の現状案に合わせ、120分を分割せずに通す演習を2回行います。1回目は第11週の前半に置き、目的は科目別正答率の確認に加えて、時間配分の癖と終盤の集中力の測定です。1回目から2回目までの1週間から10日で、見つかった癖を修正する演習を挟みます。2回目は第12週の前半に置き、修正できたかどうかを確認します。2回とも、受けたその日のうちに科目別正答率・時間配分・誤答の理由分類を記録するところまでを1セットにします。

残りの直前期は、新しい教材や新しい論点に手を出さない期間です。この時期に範囲を広げると、既習の論点の精度が下がるうえ、広げた分を演習で確認する時間が残りません。やるのは3つに絞ります。第一に、模試2回と第7〜10週で間違えた設問の解き直し。第二に、倫理・行動規範の原文のうち、してはならない行為に関する箇所の読み直し。禁忌肢は複数の設問に配置し一定数を選ぶと不合格とする設計が想定されており、設問数も閾値も2026年8月31日時点で公表されていないため、直前に精度を上げておく価値が最も高い領域です。第三に、財務・税務の計算手順を、途中式込みで一度ずつ書き出すことです。

試験日が公表されたら、どう差し替えるか

試験日が公表されたら、発表日から試験日までの週数を数え、まだ終えていないブロックにだけ1:5:4:2の比率を当てはめ直します。たとえば第2〜6週の途中で日程が発表され、残り8週だったとします。第1週は終わっているので、残る比率は5:4:2の11に対して8週なので、重点科目に約4週、全科目演習に約3週、仕上げに約1.5週という配分になります。ここで仕上げを1.5週に圧縮する場合でも、模試は2回のまま残します。逆に残り週数が多ければ、増えた分は第7〜10週にあたる全科目演習のブロックへ優先的に足します。このブロックは長くするほど効果が積み上がり、短くすると弱点の再発を見逃す性質があるためです。

週あたりの学習時間が確保できないときの圧縮のしかた

週あたりの時間が足りない場合、まず削るのは範囲であって、ブロックの数ではありません。削る順番は3段階です。第一に、重点科目以外の科目の深掘り。科目別最低基準50%程度が想定される以上、すでに基準を超えている科目の上積みは後回しにできます。第二に、優先出題項目(●印)に含まれない小項目の精読。●印のついた項目を確実にするほうが、範囲を均等に読むより期待値が高くなります。第三に、第7〜10週の全科目演習の週数です。ここは1週まで圧縮しても、演習の頻度を上げれば最低限の維持はできます。逆に、削ってはいけないものが2つあります。第1週の診断と、第11〜12週の模試です。診断を省くと重点科目が決まらず、削った時間以上の遠回りになります。模試を省くと、時間配分の失敗という知識と無関係な失点を本番で初めて経験することになります。

週の型そのものを変える圧縮もあります。平日に時間が取れない場合は、平日を演習と誤答の解き直しだけに割り切り、原文の精読を週末に集約します。読む作業はまとまった時間が必要ですが、演習と解き直しは10分単位でも成立するためです。この形にすると、1週あたりに消化できる項目数は減るので、第2〜6週にあたるブロックを6週や7週に延ばして調整します。比率を保ったまま全体を引き延ばす操作であり、順番を入れ替えるより安全です。なお、立ち上げ期は年3回程度の一斉実施が想定されているため、日程が公表されたあとに準備が間に合わないと判断した場合、次の回に回すという選択肢もあります。ただし各回の日程や申込の締切は2026年8月31日時点で公表されていないため、回数を前提にした計画は立てられません。

計画が崩れたときの立て直し方

計画は崩れる前提で運用します。1週分の遅れが出たとき、翌週に2週分を詰め込んで取り戻そうとすると、消化はできても定着しないまま次のブロックへ進むことになります。代わりに、ブロックの切れ目で立て直します。遅れが出たまま第2〜6週の終わりに来たら、消化できなかった項目数を数え、重点科目の正答率を測り直します。50%を超えていれば、未消化の項目は第7〜10週の全科目演習のなかで拾えばよく、超えていなければ重点科目のブロックを1週延長します。判断の基準を項目の消化率ではなく正答率に置くのは、残した項目のうちどれが本当に必要かが、正答率にしか現れないためです。

最初にやることは、第1週の作業を1つ終わらせることです。20問程度の演習で科目別正答率を出せば、重点科目が決まり、5週間で読む範囲が確定します。試験日が公表されていない現在は、締切から逆算できない代わりに、比率で組んだ計画を先に回しておくのに適した時期にあたります。日程が発表された時点で作り直すのは、比率の当てはめだけです。

試験日が発表されたら計画はどう直しますか?

発表日から試験日までの週数を、まだ終えていないブロックに1:5:4:2の比率で配分し直します。計画をゼロから作り直す必要はありません。残り週数が少ない場合でも、第1週の診断と第11〜12週にあたる模試2回は残してください。

3か月より短い期間しか取れません。同じモデルは使えますか?

使えます。1:5:4:2という比率を保ったまま週数を縮めてください。たとえば6週なら、診断に0.5週、重点科目に2.5週、全科目演習に2週、仕上げに1週という配分になります。縮める場合に最初に削るのは、重点科目以外の深掘りと、優先出題項目(●印)に含まれない小項目の精読です。

週末しか勉強できません。どう組み替えますか?

原文の精読を週末に集約し、平日は演習と誤答の解き直しだけに割り切ってください。1週あたりに消化できる項目数が減るため、第2〜6週にあたるブロックを6〜7週に延ばして比率を保ちます。ブロックの順番を入れ替えるより、長さで調整するほうが崩れません。

1日に何時間必要ですか?

必要な総時間は現在地によって変わるため、一律の数字はありません。4科目の正答率、科目別最低基準50%程度を下回る科目の数、優先出題項目(●印)のうち未習の数という3変数から見積もる手順は、勉強時間の記事で扱っています。総時間が出れば、本記事の比率で1日あたりに割り振れます。

模試は2回で足りますか?

1回目で時間配分と終盤の集中力の癖を測り、2回目で修正できたかを確認するため、最低2回が必要です。2回目の時点で科目別50%を割っている科目が残っている場合は、模試を増やすより、その科目の誤答の解き直しに時間を回してください。